カタールの守備網を打ち破った“荒木遼太郎の超絶技巧”。無駄のない一連の動きは、ただただ美しかった【U-23アジア杯/コラム】

2024年4月26日(現地時間)、U-23アジアカップ(パリ五輪アジア最終予選を兼ねる)の準々決勝でカタールと対戦した日本は、4-2と勝利。その試合で細谷真大(柏レイソル)の決勝弾をアシストした荒木遼太郎(FC東京)のプレーを見て、かつて荒木が言っていたことを思い出した。

「足もと、足技のトレーニングは欠かさずやっていて、ボールが思うように動かせる努力はずっとしています。トラップもめちゃくちゃ置く位置とかを考えていて、一つひとつ意図あるプレーにしています」

なぜそのようなこだわりを持つようになったのか。それは「自分は頭脳とテクニックでしか勝負できない」と荒木が自身をそう客観視しているからだ。

カタール戦の決勝点の場面、藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)からの縦パスを左足で受けた荒木は、そこから反転しながら右足で細谷に絶妙のボールを送る。無駄のないその一連の動きは、ただただ美しかった。

細谷の決勝弾に目が行きがちだが、そのゴールをお膳立てした荒木の超絶技巧、カタールの守備網を打ち破ったプレーを忘れてはいけない。

簡単そうで、めちゃくちゃ難易度が高い“左足トラップからの右足パス”。サッカー経験者なら理解してもらえるはずで、「超絶技巧」と表現しても決して大袈裟ではないだろう。

鹿島アントラーズからFC東京に期限付き移籍で加入した今季、華麗な復活劇でU-23日本代表のメンバーに滑り込んだこのアタッカーが、今大会のラッキーボーイになる可能性はまだ十分にありそうだ。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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