安全工事、5月中に完了 キャニオンルート進捗95%

10月1日ごろの一般開放を予定する黒部宇奈月キャニオンルート内の上部トンネル=昨年6月

  ●地震の影響なく 関電・須谷北陸支社長本紙単独インタビュー

 関西電力の須谷浩史北陸支社長は、1日に創刊101年を迎えた富山新聞の単独インタビューに応じ、10月の一般開放を目指す工事用トンネル「黒部宇奈月キャニオンルート」の安全対策工事の進捗(しんちょく)率が95%となり、5月中にも完了する見通しを示した。能登半島地震の影響はなく順調に進んでいる。須谷氏は「今も現役で電力の安定供給に努める場所で、電源開発に挑んだ先人の歴史を肌で感じてほしい」と一般開放への期待を込めた。

 安全対策工事では、一般開放で観光客を迎えるのに備え、トンネルの落盤対策や避難通路整備などを進めてきた。黒部側からキャニオンルートに通じるトロッコ電車は地震で橋が損傷したが、長野県大町側から資機材を運搬しているため工事に影響はなかったとした。

 厳冬期の黒部奥山は、外は氷点下の一方、キャニオンルート内の「高熱隧道(ずいどう)」は岩盤が高温のため40度の熱気に包まれている。工事では冬でも熱中症対策をして作業を行ってきた。須谷氏は「厳しい環境で工事に当たった現場の皆さんには感謝しかない」と語った。

 上部軌道トンネルを通る車両は新型の蓄電池機関車2台、耐熱客車10台を更新する。非常脱出口や緊急停止装置を備えるほか、客車の両側には映像、音声用モニターも設置し、案内機能を充実させる。日本語と同時に英語の字幕も流し、インバウンド(訪日客)に対応するとした。

  ●「地上の星」の看板設置

 2002年末のNHK紅白歌合戦で中島みゆきさんが「地上の星」を歌ったトンネル坑内の場所には、新たに立て看板の設置を検討している。歌はキャニオンルートの「黒部川第四発電所・黒部ダム(クロヨン)」建設も題材となった番組「プロジェクトX」の主題歌。須谷氏はクロヨンについて「日本の高度成長を支えた土木と建築、電気技術の礎がそのまま残る世界に誇れる資産だ」と強調した。

 ★黒部宇奈月キャニオンルート 黒部峡谷鉄道の終点である欅平(けやきだいら)と黒部ダムを結ぶ関西電力の輸送設備ルートで、総延長は約18キロ。発電施設の保守・工事用に使用されている。富山県と関西電力が結んだ協定で2024年6月の一般開放を予定していたが、能登半島地震の影響で10月1日ごろに延期となった。「高熱隧道(ずいどう)」と呼ばれる岩盤温度の高い区間や高低差200メートルの竪坑(たてこう)エレベーターなどがあり、難工事に挑んだ電源開発の歴史を体感できる。

黒部宇奈月キャニオンルート一般開放への思いを語る須谷氏=富山市の関電北陸支社

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