和歌山県立図書館で『濱口梧陵文庫』一部資料展示 5月8日まで

稲むらの火で知られる和歌山県広川町出身の偉人、濱口梧陵の子孫から寄贈された蔵書でつくる和歌山県立図書館の『濱口梧陵文庫』。この資料の一部を展示する「濱口梧陵と梧陵文庫」が、今月(5月)8日まで和歌山市西高松の県立図書館で開かれていて、このほど、地元の語り部が展示会場を訪れました。

展示を見学する語り部のメンバーら(2024年4月10日・県立図書館1階で)

『濱口梧陵文庫』は、2012年に梧陵の子孫から和歌山県立図書館に寄贈されたおよそ550点、5705冊の蔵書を集めたもので、県立図書館では、2019年から3年間、蔵書全体の調査を実施しました。

その結果、550点近い蔵書のうち、465点に「梧陵」や「南紀廣浦濱口儀兵衛所蔵記」などの梧陵の蔵書印が押されていることを確認し、蔵書の大部分が、梧陵自身の所有だったと想定できると結論付けました。

今回の展示は、『濵口梧陵文庫』の一部をデジタルアーカイブで公開するのにあわせたもので、アーカイブ化された資料などを紹介しています。

展示されている万寿盛典の一部

なかでも、中国の清王朝で1717年に刊行された「万寿盛典(まんじゅせいてん)初集」120巻のうち、41巻と42巻に収められた146枚の「万寿盛典図」は、宮廷画家や名工が1枚ずつ丹念に制作した、清王朝前期の版画を代表する作品で、初版本が完全な形で残されているのは、和歌山県立図書館を含めて全国で3カ所だけです。

また、地理や歴史関係の書籍には、梧陵によるとみられる書き込みが数多く確認され、県立図書館には、書籍の現物が展示されています。

書籍の欄外には、梧陵によるとみられる書き込みが・・・。

この会場を、梧陵のふるさと・広川町で語り部として活動している 広川町日本遺産ガイドの会のメンバー7人が、このほど(4月10日)訪れ、寄贈された書籍を調査し、『濱口梧陵文庫』を立ち上げた、県立図書館の松本泰明(まつもと・やすあき)さんから解説を聞きました。

松本さん(手前・左)から説明を受ける語り部のメンバー

ガイドの会のメンバーで稲むらの火の館の崎山光一(さきやま・こういち)館長は、「梧陵さんは、忙しかったので、本を読む暇がなかったのではないかという憶測もあったが、梧陵本人が書き込みを行っていたことで、熟読していたということだし、地震や津波の知識を持っていたことの裏付けにもなると思う」と話しました。

県立図書館の松本さんは、「濱口梧陵は、東洋的な教養・精神を土台としつつ、西洋的な学芸や技術の導入を重視した人物。蔵書の構成や書き込みにもそうした傾向は現れていて、梧陵が活躍できた背景には、多様な書籍から知識人としての教養と海外情報を収得し、時代に対応しようとする姿勢があった。『濱口梧陵文庫』は、それを現代に伝える重要な資料群といえる」と指摘しました。

和歌山市の県立図書館で開催中の展示会「濱口梧陵と梧陵文庫」は、今月8日まで開かれています。

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