勇気ある声(5月3日)

 持病を公表するのは覚悟がいる。聞き慣れない病名ならなおさらだろう。それでも、病状を理解してほしいと明かすスポーツ選手や芸能人が増えた。同じ患者が元気づけられる▼国指定難病の潰瘍性大腸炎を患う人は国内に約20万人いるとされる。安倍晋三元首相が公にして広く知られるようになった。重症になると、急な腹痛に悩まされ、どこへ行ってもトイレの心配がつきまとう。この病を含む炎症性腸疾患は英語でIBDと略される▼「I know IBD ご遠慮なくどうぞ」。いわき市内の施設で見かける機会が増えたステッカーだ。気兼ねなくトイレを使って、と勧める。市内出身の10代男女3人でつくる「IBD広め隊」が活動し、昨年4月から協力を呼びかけてきた。同じ境遇の人の不安を和らげたい―。病を明かしたメンバーの思いがこもる▼若者たちの勇気ある声に応え、地元のスーパーは市内外の約100店舗にステッカーを張り出した。10代が投げかけた一石は、さざ波のように地域に広がりつつある。振り返れば、ハンセン病の人たちの苦しみは、社会の無知から生まれた。正しい理解から思いやりが芽生える。周囲の気遣いが良薬になる。<2024.5・3>

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