不傳流居相術を伝える武道家ロシアへ 弟子同士が戦場へ…伝えたかったのは「自他共栄」

ウクライナと泥沼の戦争を2年余り続けるロシア。
そのロシアに先月まで、島根県松江市の武道家が1か月ほど滞在し空手道などを指導しました。
なぜロシアで…そして武道の道に生きる男性の願いとは。

NPO法人重吉伸一サムライ道場・重吉伸一 理事長
「モスクワの空港ですね。厳重態勢とか全然そういうこともなく。普段通り撮っても、そんなに軍隊がいるわけでもない。」

松江市の重吉伸一さん。
大名茶人として知られる松江藩主、不昧公ゆかりの不傳流居相術を伝える武道家です。
コロナ禍が明けたことで、世界各国の弟子たちに招かれて海外での武道教室を再開しました。

NPO法人重吉伸一サムライ道場・重吉伸一 理事長
「武道は盛んですね、ロシアは空手や柔術、柔道、サンボ。とても盛んですね。今まで13回程行きました。」

今回、3月下旬から1か月近くの間、ロシアと中央アジアのカザフスタンに滞在しました。

NPO法人重吉伸一サムライ道場・重吉伸一 理事長
「全く戦争という感じはありません。普段の日常生活そのものです。」

到着の翌日にはモスクワでテロ事件がありましたが、変化は感じられなかったといいます。

NPO法人重吉伸一サムライ道場・重吉伸一 理事長
「(国土が)大きいし広いし、人口も多いですので。ウクライナと戦争はしているっていうのは分かるけど、直接自分たちには一般の市民の方は関係してないので。」

ウクライナとの国境からわずか数100キロの街にも行きましたが、戦火の影は全く感じなかったといいます。
そして一般のロシア人は規律正しく指導にも素直に応じ、また練習熱心だったとのこと。

NPO法人重吉伸一サムライ道場・重吉伸一 理事長
「(食堂では)きちんと並んで静かにご飯を食べている。横断歩道があったら必ず車は停まって。1か月近くいてですね、生活を見てみると、そういうきちんとしたモラルもあったりして、人々は優しいですね。」

ただ戦場では、ロシアとウクライナの弟子同士が戦っています。

ウクライナは現在、入国出来ませんが、ロシアに渡ったのは武道の精神が戦争終結に何か役立ったらと願ってのことでした。

NPO法人重吉伸一サムライ道場・重吉伸一 理事長
「同じ仲間だ、武道する仲間だということでフレンド、フレンド。フレンドだから(と繰り返し教えた)。(戦争が)早く終わって欲しいなと思います。嘉納治五郎先生の言われた、自他共栄。共に自分も他の人も、共に栄えて行くっていう(武道精神が広まれば)。」

重吉さんの願いの通り、2つの国の弟子たちが武器ではなく武道で相対する日が一刻も早く戻ることを願います。

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