【マートル】の栽培方法と活用アイデア2選|桐原春子さんの育てて楽しむハーブ生活

「ハーブは暮らしに役立ててこそ、楽しい!」と話すのは、長年にわたってハーブを育て、その利用法を研究してきた桐原春子さん。本連載では、毎回1種類のハーブを取り上げ、栽培方法や活用方法、歴史などを教えていただきます。第35回は【マートル】です。

本連載の他、桐原春子さんの記事はをご覧ください。

祝祭に使われてきた【マートル】

西洋では古くから祝祭に用いられてきたマートル。うれしいことがあった日や希望をもちたいときに飾ったり、使ったりして、日々の暮らしに明るさを添えましょう。

別名/ギンバイカ(和名)、イワイノキ、ギンコウバイ
科名/フトモモ科
性質/常緑低木
樹高/3~4m

結婚式のブーケにも使われる「愛の象徴」

マートルは地中海沿岸や西アジア原産の常緑低木で、ヨーロッパでは古くから庭木や生け垣に利用されてきました。葉に芳香成分を含む油腺があり、軽くたたいたり、もんだりするとフルーティーな香りが漂います。

「マートルは神話では美の女神・ビーナスの木とされ、西洋で愛の象徴と見なされてきました。紀元前4世紀のマケドニア王国ではマートルをかたどった金冠が作られています。英王室ではビクトリア女王がマートルを愛し、離宮で育てていました。その木が今も受け継がれ、キャサリン妃のウエディングブーケにもマートルが用いられました」と桐原春子さん。

日本では珍しかった40年前からマートルに惹かれ、ビクトリア女王の離宮も訪ねて苗を育ててきました。

「何といっても緑の葉が素晴らしく、幹の色もオレンジがかった茶色で素敵です。この花が咲いたら家が幸せになるという言い伝えもあるんですよ。だからたくさん挿し木をして親しい人に分けてきました」

桐原さんはフレッシュな枝をブーケの材料にしたり、葉をドライにしてポプリに使ったりとクラフトに活用。食用にすることはありませんが、ローストした肉を葉とともに包んで香りを移したりするそう。

「イタリアでは熟したマートルの実を使ったミルト酒というお酒も」

丈夫で育てやすく、鉢栽培も可能

栽培は容易で害虫の被害も少ないハーブ。木が育つと花つきがよくなります。

日当たりを好み、耐寒性はやや弱いので、寒冷地では冬は暖かい場所に取り込むのがおすすめ。挿し木は、寒い時期には室内で、それ以外は軒下で可能。

「多くの詩や絵画に登場する木なので大切に育てて楽しみましょう」

花も常緑の葉も美しい

マートルの苗を陶器の鉢に植え、土の表面を水ごけでカバー。先がとがった小さな卵形の葉はつやつやと美しく、樹形を整えながら育てていく楽しみがあります。

夏には丸い蕾がふくらんで、糸のようなしべをもった純白の花を多数咲かせます。

活用アイデア① マートルのミニクッション

ドライマートルの葉をハンカチに詰めた、小さな香りのクッションです。

あらかじめ、マートルの葉を煮出した染色液でハンカチを染めておくと、より本格的なハーブクラフトに。ドライマートルの葉1カップを水3カップほどで10分間煮出して浸出液を作り、水で濡らして絞った布を入れ、20分ほど弱火で煮ます。火を止めて4~5時間おいたら、水洗いを。輪ゴムで布を縛って絞り染めにしても素敵です。

マートルのポプリや、マートルが描かれた絵も添えて。

作り方

❶28㎝角のシルクのハンカチ2枚を中表に重ねてとめ、返し口を約10㎝残して周囲を縫う。

❷①を表に返し、カリカリに乾燥させたマートルの葉約12カップを返し口から入れ、返し口を縫い閉じる。四隅に貝殻形のスパンコールを縫いとめる。

活用アイデア② ウエディングブーケ

愛の象徴のマートルを花嫁のブーケに。ブルースターやデンドロビウム、ストック、八重咲きのトルコギキョウ、八重咲きのマーガレットなどの白花に、マートルやアスパラゴイデスの緑を加え、ラウンド形にまとめます。幸せになるという言い伝えどおり、青花のローズマリーも1枝しのばせて。

茎はワイヤでしっかりとめ、水を含ませたキッチンペーパーを巻いて小さなポリ袋に入れ、ラッピングペーパーで包んでから白のリボンを巻きます。

花婿が左胸に挿すブートニアもおそろいで作りましょう。

撮影/川部米応

※この記事は「ゆうゆう」2021年6月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。


監修者
園芸研究家 桐原春子

英国ハーブソサエティー終身会員。長年、自宅でさまざまな植物を育て、家庭での実用的かつ美しい庭づくりを提唱。国内外の多くの庭を訪れ、ハーブの歴史、育て方、利用法を研究。カルチャースクールでハーブ教室の講師を務める。『知識ゼロからの食べる庭づくり』(幻冬舎)など著書多数。ブログ「桐原春子のハーブダイヤリー」やインスタグラムでも情報を発信中。

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