阿武隈山地の山里。新緑の木々に囲まれ、炭窯が並ぶ。
創業50年を超えるマル鈴の3代目鈴木貴司さん(44)が、奥行き約4メートル、幅約2メートル、高さ約1.3メートルの内部に1本ずつ丁寧に原木を並べていく。太さにより450本から千本以上入る。着火後の温度は800度以上。炎の具合や立ち上る煙の色とにおいから状況を判断する。火の勢いを止める過程は炭の出来を左右するため、寝ずの番が必要だ。焼き上がるまで約2週間。気を抜けない作業が続く。
お客さんに喜んでもらえる炭作りにこだわる。一年の限られた期間に町内の山林から主原料のクヌギなどを切り出し、加工する。断面が菊の花のように見える茶道用の炭は火持ちが良く、煙が出ないと評判だ。福島県内はもとより関東や関西にも愛用者は多い。
炭は消臭剤などにも使われ、用途は多岐にわたる。「伝統の技を残したい。一生勉強です」。鈴木さんは一層の精進を誓う。
【メモ】▽住所=小野町夏井字川除24の1▽電話=0247(72)6045