【素敵なあの人の家時間】ブイロガー・暮らしのつづりさん「海辺の平屋で“小さく暮らす”がテーマです」

めまぐるしい日々の中、大切にしていること、変わらないこと、ずっと好きなモノは何ですか?「日常に楽しみを見つけるささやかな暮らしを大切にしていきたいです」という、人気ブイロガー「暮らしのつづり」さんの「家時間」を見せていただきました。等身大の暮らしのアイデアが満載です。

PROFILE
夫と2人暮らし。アパレル、飲食、製菓などさまざまなもの作りに携わり、現在は草花キャンドル作家として活動中。2020年に現在の住まいに移り、日々の丁寧な暮らしをブイログに公開。

YouTubeチャンネル「暮らしのつづり」
Instagram @kurashino_tsuzuri

暮らしのつづりさんの「家時間」の一部を、動画でご紹介します。

大切にしていること/巡る季節の美しさを見逃さないために、心にゆとりを持ちたいです

これまでは住まいを転々とし、仕事に没頭する日々でした。それはそれで充実していましたが、いつも「頑張らなきゃ」と何かに追われていたのも事実です。でも海辺の平屋に腰を落ち着けてみると、心にゆとりを持つことの大切さが身にしみてわかりました。引っ越しのタイミングがちょうどコロナ禍だった、というのも大きいかもしれません。

今は、何においても余裕を持って、ささやかなことに時間をかける楽しさを味わっています。ゆとりがあると、ただ近所を散歩しているだけで「きれいな木の実が落ちている」「葉っぱが色づいている」と今まで気づかなかったことにも目が向くようになるんです。小さなことですが、こうした日々のうれしさ、気づき、季節の移ろいが私の心を豊かにしてくれています。

遠方に住む実家の父から届く手作り野菜を見て、「これで何を作ろうか」とワクワクしながら考える。産直で旬の食材を手に入れ、味を想像したり、形を愛おしく感じる。今晩のおかずをどの器に盛りつけようかと食器棚を見渡す。庭の小さな花を摘んで、押し花にする……。過去の忙しさがあったからこそ、何かに手をかける時間があることに幸せを感じています。

庭のハーブを摘んでティータイム

庭では数種類のハーブを育てています。レモンバームを収穫し、フレッシュなまま砂糖と一緒にティーポットへ。レモングラスもお茶に使います。ラベンダーは布袋に入れ、湯船に浮かべる楽しみも。

大切にしていること/夫婦2人の平屋住まい。小さく暮らす、がテーマです

<祖父母の家のような、 落ち着く空間をめざして>白と木を基調としたシンプルなリビング。寝室も兼ねていて、折りたたみタイプのマットレスを使ってここで寝ています。これからも住みながら少しずつ自分好みのDIY を加えていくつもりです。

平屋を選んだのは、夫婦2人暮らしなのでコンパクトに住みたかったから。小さくても、心地よく暮らせる空間を作りたいと思っています。海辺に住むのも憧れでした。あえて都会から離れて、不便を楽しんでみたいという思いも。

心の奥底にあるのは、祖父母が暮らしていた山奥の家。薪でお風呂を沸かすような暮らしは真似できませんが、歴史を感じる日本の古道具や家具のイメージは、今のインテリアにも投影されています。古道具はメンテナンスに時間がかかるけれど、手をかけることでみるみる姿が変わり、愛着が湧いてきます。

よく使うキッチン道具は風通しのいい場所に
せいろは以前しまいこんでいたらカビが生えてしまったため、風通しのいい換気扇上に置いています。
キッチンの作業台の向かいには水屋が。前にチェアを置き、長い時間を過ごすお気に入りの場所です。

新しい習慣/暮らしを整える、という目標があったことが救いになりました

新しい暮らしは、コロナ禍とともに始まりました。イメージと違う仕上がりだった壁を左官屋さんに塗り直しをお願いして、小さなDIYで家具を修繕。自宅併設のアトリエに置いている大きなテーブルは、古い塗装を剝離させ自分でオイルを塗りました。チェアも座面を張り替えています。

やりたいことが山積みだったので、時間を持て余すことはありませんでした。アトリエでのワークショップを開催できず、外出すらままならなかった時期も、この家が寂しさを埋めてくれたようなもの。暮らしを整えることに没頭できました。

古家を解体する人から譲り受けたドア。勝手口のパーテーションに作り替えました。緑からマットな白に塗り替え、脚を設置。
玄関照明は入居後にシェードをはずし、自分好みの白にペイント。玄関ドアは自分でデザインして建具屋で作ってもらいました。
手をかけてメンテナンスしたテーブルとチェア。ガラスのペンダントライトは蠣﨑マコトさんの作品です。コードまで白というのが珍しく、光の輪が部屋に広がる優しい照明で、とても気に入っています。

新しい習慣/思いのほかキッチンで長い時間を過ごしています

炊飯器を手放し、無水鍋で炊いています

引っ越しを機に、炊飯器から鍋炊飯に変えてみました。やってみたら意外と簡単。冷めてもおいしいし、水加減や気温、ちょっとした違いで味わいが変化するのも面白いです。HALムスイのKING無水鍋を愛用。

調理器具は、持つ感触にもこだわります
ステンレスから木の柄の包丁、志津刃物製作所のゆりに変えました。女性の手に合う設計で、切れ味も抜群。宮島工芸製作所のイチョウ型ヘラは、鍋のカーブにぴったりフィット。しゃもじは桜の木製。竹製のミニ刷毛は、薬味をおろしたあとかき寄せるのに重宝しています。手のひらサイズでかわいいです。

ずっと好きなもの/何か欲しいと思ったら買う前に自分で作ってみます

好きな色、好きな素材で作れるのが醍醐味です
凝り性で、何でも作ってみたくなる性分。買うよりまず先に自分で作れないかを考えてしまいます。お茶碗は、陶芸教室に通って作りました。普段使いしています。
ランチョンマットも、どこかで見た半月のフォルムがかわいくて手縫い。コースターはリネンやコットンで作り、真鍮のスプーンも古道具店を営む知人の作業場で自作しました。
粉引きの器をコレクション
高木剛さんの粉引4.5 寸高台皿(奥)は、京都の和菓子屋さんで使われていたのを探し当てて購入。村上直子さん(右)や小山乃文彦さん(左)の器もお気に入り。作家は違っても、ついつい粉引を選んでしまいます。

ずっと好きなもの/家に迎えるものは思い出や思い入れを大事にしています

離れて暮らす妹の面影を感じています
島根の作家、安部太一さんの作品が大好きです。まずろうそく立て(上の写真左)を家に迎え、数年を経て陶人形(同右)を購入しました。私は三姉妹で、いちばん下の妹は今、海外暮らし。コロナ禍ということもありしばらく会えておらず、この人形を見ると妹を思い出します。
古い糸巻きと陶器の燭台型ランプ(右の写真左)はvickey’72のもの。最近手に入れたお気に入りです。隣のソイキャンドル(同中)は自分で作ったもの。煤や煙が出にくく、空気も浄化してくれます。
沖縄旅ではやちむんを連れて帰ります
夫と毎年沖縄に旅行するのが恒例。その思い出とともに、気に入ったやちむん(焼物)を持ち帰ります。伊賀焼のあたため鍋(奥)は直火OKなので、ストーブの上で愛用中。

ずっと好きなもの/灯と草花。好きなことを組み合わせて仕事にしました

物心ついたときから、灯が好きでした。誕生日ケーキのろうそくを親に隠れて灯し、叱られたことも。いろいろな仕事につきながらも大切な場面でキャンドルをいただくことが多く、導かれたかのようにキャンドル作家になりました。

その一方で、植物も大好き。好きなものを融合させればいいと思いつき、今ではロウへ草花を閉じこめたキャンドルを作るように。火を灯したときに映る影が、なんとも言えず美しいと思っています。

アトリエでは草花キャンドルを展示、販売。庭の草花を摘んで押し花にしたり、ドライフラワーやリースも製作しています。
今はワークショップも少しずつ始めている状態。

家の整え方/大きな収納家具よりかごやボックスを多用しています

目が届く、持ちすぎない暮らしが理想です。引っ越しのたびに、ものを少しずつ減らし、大きな家具をあまり使わない収納を続けてきました。平屋に落ち着いた今も、それは同じ。家具が少ないと、空間を広く使うことができます。

ふたつきのボックスを重ねたり、かごやバッグを収納ケースに使ったり。使う場所や用途を変えながら、長く愛用しているものが多いです。収納として使うには少しくたびれてきた大きな竹かごは、今はキッチンでゴミ箱として活用しています。そんなふうに、あるものを大事に、丁寧に使っていきたいです。

ワインが入っていた茶色いボックスは、マットな白に塗り替えてDIY(下)。現在は夫の 小物入れとして使っています。
キッチンでは毎日使うふきんをかごに入れ、作業台に出しっぱなし。小さなかごはいたるところで収納に使っています。
リビングに置いている唯一の収納棚。おしゃれアイテムや外出に使うものをまとめています。上のかごには防寒具を収納。

家の整え方/暮らしの道具、ほうきや刷毛でホコリをとっています

掃除機より、自分の手でほうきがけ。職人さんの道具は使いやすく、手にもなじみます。

家具の細かい溝や隅には、ペンキ塗りの刷毛を活用。ホームセンターで購入したものです。DIYの材料を調達するためよく訪れますが、じっくりいろいろなコーナーを回るのが好き。用途が違うものでも「これは掃除に使えるな」など想像してみて試すのがひとつの楽しみになっています。キャンドルの上部やアクセサリーのホコリを払うのには、小さな熊野筆を使っています。ものを傷つけることなく、優しく払い落とせるので便利です。

熊野筆(左)は、アクセサリーなどを入れている棚に釘を打ち、吊るして収納。ささっとゴ ミを集められるミニほうき(右)も一緒に。

癒しの家時間/庭仕事は無心になれる貴重な時間です

どの家時間も気に入っていますが、無心になれるという意味では庭いじりがいちばん。没頭するとなかなかやめられません。何も考えずただ手を動かせば頭の中がすっきり。疲労感も心地いいです。草引き、芝刈り、剪定、ハーブのお世話。どれも欠かせない日課です。

引っ越してまだ1年足らずなので、庭はまだまだ進化の途中。種まきした草花がようやく芽吹き、にぎやかになってきました。5年後、そしてその先を想像してじっくり育てていくつもりです。冬にいろいろな球根を植えたので、まずは春の色づいた風景を心待ちにしています。

大きな庭は夫婦2人の希望。長年愛用しているエプロンのひもをキュッと結んで。意欲を高めてくれる、大切な存在です。

癒しの家時間/手作りおやつとお茶。体が欲するものをいただいています

甘いものは我慢しすぎず、体の声を大切に。食べたいと思ったときは、手作りおやつで楽しんでいます。実家から届いたかぼちゃで作るかぼちゃプリン、皮から作る大福、抹茶チーズケーキ……。自分で作ると、体に優しい食材で糖分控えめにできます。手作りするのは週に1回ほど。

おやつの種類と気分に合わせて、お茶もいろいろ楽しみます。黒豆ほうじ茶やハーブティー、スパイスを調合してチャイを作ることも。近所に住む妹や姪っ子たちとにぎやかに過ごすお茶時間も日々のささやかな楽しみです。

抹茶チーズケーキ。お気に入りの大嶺酒造Ohmine Cup の空き瓶で1人分のホイップクリームを泡立て、あんこと一緒に添えました。

私のこだわり/動画は姉妹で共同製作。 暮らしを見つめ直すきっかけにもなっています

ブイログは、始まったばかりの平屋暮らしを記録に残しておきたいと思っていたところに妹からすすめられて始めました。ささやかな暮らしのひとコマ、何げない風景、季節の移り変わり、日常にあふれる小さな楽しみを公開しています。

ひとりの時間で私が動画を撮りためておき、編集は妹と一緒に行います。近くに住んでいるので、休日には一緒に撮影することも。文章は私が考えますが、私の言葉では伝わりにくいこともあるため妹にも見てもらいます。ブイログはいわば姉妹の共同作品です。

投稿を始めてからは、さらに客観的に自分の暮らしを見つめ直すことができるようになりました。世の中にあることは、見方ひとつで考え方や表現が変わります。さまざまな方からコメントをいただくことで、ものごとの正解はひとつではないということにも気づかされました。

その一方で、「人と違うところがあっても、自分はこれでいいんだ」と再確認できた部分も大きいです。小さな暮らしのヒントや日常に隠れた楽しみ、私の気づき。動画を見たが、そのうちの何かひとつでも感じるものを見つけてくださればうれしい。そう思いながら公開を続けています。

手作りクレームブリュレ。2人のお茶シーンも動画ではおなじみ。

撮影後は、手作りのおやつやおいしいお茶と一緒に動画をチェック。デザイン関係の仕事につく妹は、撮影や編集のアイデアも出してくれます。姉妹だから、遠慮なく意見を言い合えます。大人になってから思いがけず作れた姉妹の時間です。

※この記事は『自分らしく暮らす人の「家時間」』(主婦の友社編)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※2023年2月23日に配信した記事を再編集しています。


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