「5類」移行1年、県内生活は… 「日常」戻るも、続く警戒

パーティション越しに面会する入所者とその家族=寒河江市・介護老人保健施設「寒河江やすらぎの里」

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行し、8日で1年となった。医療・介護分野、産業、生活などの分野で県民生活はどう変わったのか、変わっていないのか。現場の声を拾った。

【病院】 酒田市の池田内科医院では、発熱患者に対して5類移行前は電話で診療の予約を受け付け、検査場所は駐車場の車内だったが、移行後は医院内の別室で検査をするようになった。感染症対策の防護服とフェースシールドを着用していた看護師は現在、発熱患者かどうかに関係なく、マスクと手袋のみでの対応としている。同医院の看護師は「移行直後は発熱時に院内に入っていいか問い合わせが多かったが、最近は少ない」と変化を口にした。

【福祉施設】 寒河江市の介護老人保健施設「寒河江やすらぎの里」では、昨年12月に施設内での面会を再開。入所者や面会に来る家族に好評という。5類移行後も職員の朝、昼2回の体温チェック、手指消毒といった感染対策の徹底は継続。担当者は「高齢者を多く預かっているため予断は許さない状況」としながらも「利用者がストレスなく生活できるように、状況を見ながら緩和できる部分は前向きに検討したい」と語った。

【タクシー】 タクシー業務などを行う米沢市の辻自動車では、コロナ禍前に50人以上いたタクシー乗務員が45人に減った。5類移行前の昨年同時期と比べ、売り上げも1~2割程度減少。コロナ対策の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が始まったが、5類移行後も客足は戻らず、経営は厳しさを増す。中沢昭夫総務部長は「月や時間帯の利用状況に応じて乗務員のシフトを変えているが、その作業は本当に大変。車の台数を減らして経費もさらに抑えなければ」と頭を抱えた。

【スーパー】 スーパーのヤマザワでは5類移行直後は特段対応は取らなかったが、今年3月から従業員のマスク着用を任意とした。今後は利用客の反応を踏まえ、衛生管理に配慮した上で無人の試食販売が再開できるよう検討したいという。山形市の松見町店ではコロナ禍以降、店舗入り口に手指消毒液、レジやサービスカウンターではパーティションなどの設置を継続している。三沢智彦副店長は「マスクはほとんどの従業員が自身の健康を守り、お客様の安心感につながるとして続けている。この1年で大きな変化はなく、引き続き感染対策を徹底する」とした。

【家庭】 家庭はどうか。村山市樽石、農業反町貴浩さん(36)は、妻と子ども2人の4人暮らし。一家は5類移行後も手洗い、うがい、アルコール消毒が習慣として定着した。「コロナに限らず、風邪やインフルエンザの予防になる」と反町さん。一方でマスクを外す機会は増え、徐々にコロナ禍以前の日常を取り戻している。5類移行後は、自宅に友人を招いての宴会もコロナ禍以前と同様に企画するようになった。妻の舞さん(35)は「顔を合わせないと疎遠を感じてしまう」とし、気兼ねなく交流できるようになり喜んでいる。

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