【SNS特報班・防災】宮崎日日新聞 延岡市の「畳堤」

畳堤を設置する様子を再現した石像

■自助共助の思い 後世へ

 宮崎県北部の延岡市中心部の河口では五ケ瀬川や大瀬川、祝子川、北川が合流する。最も水位が上がりやすい五ケ瀬川沿いには、水害から住民を守るために設置された「畳堤」と呼ばれる特殊な堤防が残る。

 保存に取り組む「五ケ瀬川の畳堤を守る会」(奴田原君枝会長)によると、堤防は大正末期~昭和初期ごろに完成したとみられる。コンクリート製で高さ約60センチ、厚さ約30センチで、扇状の穴が空いている。増水時に幅7センチの隙間に畳を差し込み、穴をふさげば堤防になる。

 現在は両岸に約980メートルが残っているが、かつて総延長は2キロあったという。約千枚の畳が必要なため住民たちが団結して畳を運び、避難までの時間稼ぎに活用してきたとみられる。

「畳堤に込めた先人たちの思いを残したい」と語る岡田光直副会長

 先人の知恵を伝承しようと、同会は2016年に畳を差し込む住民の様子を再現した石像を設置。岡田光直副会長は「畳堤からは先人たちの自助共助への思いが伝わってくる。後世に残していきたい」と石像に込めた思いを語る。近くには畳堤の由来を伝える石碑もある。

 石像の周辺を含めた市中心部は洪水で浸水するリスクがあり、危険が迫った場合はいち早く避難しなければならない。現在、畳堤は使われていないものの、同会は現地や市内の小中学校などで歴史を伝え、防災意識の向上につなげている。

 奴田原会長は「災害を人ごととして捉えることなく、備える必要性を伝えていきたい」と話している。

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