新型コロナ5類移行1年、戻る「日常」 対面給食や脱マスク広がる 医療、福祉は警戒続く

5月から「対面給食」に戻った小学校で、笑顔で食事する子どもたち=8日午後、栃木市城内町1丁目

 新型コロナウイルス感染症が季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行し、8日で1年が経過した。県内の街頭にはマスクを外した人の姿が多く見られる一方で、着用を続ける人の姿も。学校現場では「前向き給食」を対面給食に戻す動きと継続とで対応が分かれ、福祉施設では感染再拡大への警戒が続いている。戻って久しい日常の傍らで、感染対策が定着したコロナ禍の名残がさまざまな場所で見受けられる。

 通勤通学ラッシュの時間帯の午前7時半、次世代型路面電車(LRT)の宇都宮駅東口停留場。会社員や学生らでごった返す中、マスクを着けた人の姿も少なくない。

 「医療系の仕事なので家族に移さないように」。マスク姿で電車を待っていた矢板市東町、鍼灸(しんきゅう)マッサージ師加治佐博昭(かじさひろあき)さん(49)が理由を説明した。

 一方、友人と通学中のさくら市、専門学校1年鈴木里菜(すずきりな)さん(19)は今年に入って脱マスクに切り替えた。「周りで外す人が増えてきたので自分も。中学、高校時代はコロナの影響を受けたので、今度は学生生活を楽しみたい」と笑顔で話す。

 5類移行に伴い、感染対策の判断を各学校に委ねられている教育現場。栃木市栃木第四小は4月中旬のPTA総会での説明を経て、大型連休明けに給食を「前向き」から、グループごとの「対面」に戻し始めた。2年生の児童は8日、主に4人で机を向け合い、牛乳で乾杯したり友達と笑い合ったりしながら食事を楽しんだ。

 浅川芽生(あさかわめい)さん(7)は「みんなと食べられてうれしい。嫌いな野菜もあるけど、友達が食べているので頑張って食べたい」と笑顔。木村信孝(きむらのぶたか)校長(57)は「安全安心を守りながら、子どもたちが給食を楽しめるよう検討してきた。食事を共にすることで仲間意識を育んでほしい」と目を細めた。

 一方で、一定数の学校が感染対策を理由に前向き給食を継続している。県北の小学校の教頭は「子どもたちにとって前向きが日常になっている」と話し、対策が定着し、習慣化されていることを強調した。

 日光市内にある特別養護老人ホームは、5類移行に伴い面会をリモート形式から対面に戻した。ただし、面会の時間や場所は制限し、家族にもマスク着用を求めるなどの対策は今も継続している。

 職員は引き続き全体での食事会は控え、プライベートでも商業施設などではマスクを着用する。担当者は「高齢者は感染した場合の重症化リスクが高く、持病がある人も多いので、職員は敏感になっている」と警戒を続けざるを得ない実情を語った。

LRTを利用して通勤、通学する人たち。マスクの有無はそれぞれ違っていた=8日午前、宇都宮市宮みらい

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