福島県内89億円過去最高 2023年度ふるさと納税 前年度比1.5倍 処理水放出で応援機運も

 福島県内59市町村への2023(令和5)年度のふるさと納税による寄付額(速報値)は前年度比約1.5倍の89億円となり、過去最高を更新する見通しとなった。昨秋のルール厳格化前の「駆け込み申請」に加え、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出開始後に県内水産業を応援する全国からの利用が伸びたとみられ、40市町村で増加した。市町村は自主財源の確保や地域振興に向け、情報発信にさらに力を入れる。

 県が9日までに59市町村に寄せられた昨年度分のふるさと納税などの総額を速報値でまとめた。結果は【表】の通り。前年度より寄付額が増えた市町村数は全体の7割に上り、前年度の33市町村より7市町村増えた。トップは果物の返礼品が好評の福島市で14億5862万円となり、3年連続で10億円を上回った。寄付額が1億円を超えた自治体数も3割超の22市町村となり、前年度より7市町村増加した。

 全体的に利用が好調だった要因について、県市町村財政課は、返礼品が地場産品に該当するかの基準の厳格化など昨年10月のルール改正前の「駆け込み申請」があったと分析する。制度が改めて話題になったことや返礼品の内容変更などを想定した人が大勢いたことから寄付額が一時期に集中して増える傾向にあったとみられる。会津坂下町はルール改正前に寄付が増えたという。ビーズソファや日本酒などの返礼品が人気を集め、前年度の1.4倍の5億1562万円に伸びた。大熊町には過去最高の1100万円が寄せられた。原発事故からの復興に役立ててほしいと返礼品を求めずに寄付を継続する県外の支援者がいるという。

 処理水海洋放出後、水産業応援の機運の高まりも寄付の動きを後押しした。福島県沖で水揚げされる魚介類「常磐もの」の加工品などを返礼品として贈るいわき市には9億2148万円が寄せられ、前年度より3億7千万円増え、伸び率も約1.7倍でともに過去最高となった。

 ふるさと納税は地元に住んでいなくても、大きな災害が起きるなど厳しい状況にある市町村などを応援したい全国の人から寄付を募り、税収を増やすことができる。自治体は子育て支援や物価高騰に苦しむ住民への補助事業実施などの柔軟な財源に充てることができる。いわき市も観光振興や常磐ものの認知度向上などに活用する考えで、市創生推進課は「かなり大きな財源。応援の機運を継続できるよう、魅力ある商品開発を進めたい」としている。

 前年度を下回ったのは19市町村だった。相馬市は735万円で、前年度より912万円少なかった。2022年3月の福島県沖地震で2022年度は寄付額が伸びたが、2023年度は減少した。広野町は297万円で、657万円減少した。返礼率に関する国の手続きに時間がかかり、募集開始が秋ごろになった影響があるという。

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