コロナ前に戻れぬ医療 5類移行から1年、県内医療機関 通常体制切り替え進むも

医療用ガウンなどを身に着けてコロナ患者が入院する病室に入るスタッフ=7日午後、宇都宮市竹林町

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し1年となる中、患者と向き合ってきた栃木県内の医療機関は診療体制を変化させている。治療に関わる公費支援は3月末で終了した。感染対策を一部緩和し、一般病棟でコロナの入院患者に対応するなど、通常の医療提供体制への切り替えが進む。一方、コロナへの警戒を緩めることはできず、コロナ禍前には戻りきれない側面がある。

 患者数に応じて柔軟に病床を確保してきた国立病院機構栃木医療センター(宇都宮市中戸祭1丁目)。5類移行後の1年間では、常時10~20人のコロナ患者が入院している。年間では肺炎での入院者数と同程度という。

 コロナ禍では患者を専用の病棟で受け入れ、内科系で診療していた。5類移行に伴い、徐々に受け入れ態勢を変え、現在は全病棟の個室でコロナ患者に対応。入院患者が発症した場合も内科に転科させず、担当医がそのまま診療する体制にした。

 矢吹拓(やぶきたく)内科部長(44)は「感染しやすいウイルスであることに変わりはなく、これまでの知識を基に適切な対応をしている」と話す。

 済生会宇都宮病院(宇都宮市竹林町)は3月末、コロナの感染拡大後、4年間続けてきた院内全体の「新型コロナウイルス感染症対策プロジェクト」を終了させた。2023年度は「移行期」として、医療体制を維持しながら、対応を変えてきたという。現在はコロナ患者も別の疾患の患者も、病棟を分けずに入院している。重症化して亡くなるコロナ患者はほぼいないという。

 5類移行前は基本的に禁止としていた面会も23年11月から、時間と人数を制限した上で可能とし、対策も緩和している。

 一方、感染への警戒は続く。病室への入室時にはほとんどの看護師がその都度、医療用ガウンやフェースシールドなど一式を身に着けている。スタッフの懇親会開催にも制限が残っている。

 小倉崇以(おぐらたかゆき)救命救急センター長(40)は「コロナがなくなったわけではなく、感染症で苦しむ患者も含めて医療を提供する必要がある」と強調する。

 篠崎浩治(しのざきひろはる)副院長(59)はコロナが感染拡大し、5類移行を経た4年間を振り返り、「急性期から軽症まで医療機関別の体制と協力関係が構築された。生かせる経験を継続したい」と話している。

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