主将として古巣をB1舞台へ…越谷アルファーズの長谷川智也が自身で作った「最高のストーリー」

試合終了残り3.1秒に小寺ハミルトンゲイリーが2本のフリースローを成功させてリードを4点に広げると、ベンチから試合の戦況を見守っていた長谷川智也は勝利を確信したかのように力強いガッツポーズ。越谷アルファーズが最終スコア75-72で勝利をつかみ、「日本生命 B.LEAGUE B2 PLAYOFFS 2023-24」ファイナル進出を決めると同時に、悲願のB1昇格を確定させた。

「本当にみんながよく頑張ってくれたのと、超満員のアリーナでB1をかけて戦う空間にいられることが感無量というか。今までに味わったことのない気持ちで、本当に勝ったのかというような気持ちでしたね」

セミファイナルはレギュラーシーズンで56勝4敗の成績を残したアルティーリ千葉が相手。Bリーグ最高勝率を更新した難敵でも、大歓声に包まれた敵地の千葉ポートアリーナでも越谷が怯むことはなかった。リードチェンジ9回、同点5回の熱戦。第1戦に敗れてあとがない相手を振りきった。キャプテンの長谷川が明かす。

「レギュラーシーズンとプレーオフは全然違います。自分たちには(ヘッドコーチの安齋)竜三さん、ベテラン選手など、経験のある人がいます。レギュラーシーズンでは6回戦って1勝したし、自分たちのミスで負けていた試合もありました。苦手意識はあまりなかったと思います」

「率直にうれしいですし、とても幸せな気持ちです」と昇格の喜びを語った長谷川は、6分12秒のプレータイムで2本の3ポイントを成功。ピンポイントでの起用でも活躍を見せ、ベンチにいる時間帯はチームメートへ積極的に指示を送った。

「プロチームは一人ひとりが仲間であり、ライバルでもあります。いろいろな気持ちを抱えるのがチーム。一発勝負の戦いでエゴを出さなければいけない部分もあると思いますけど、そこで僕が率先して声掛けをするのはキャプテンとして当たり前だと思います。みんながバラバラにならず、しっかりと付いてきてくれる実感もありました。チームとしてまとまったと思います」

試合後にはチームメートと喜びを分かち合った [写真]=B.LEAGUE

安齋HCは第1戦で出番がなかった長谷川を、第2戦では第1クォーターからコートへ送り込んだ。宇都宮ブレックスをリーグ優勝に導いた名将は“持っている男”へ賛辞を贈った。

「今シーズンのチームを引っ張ってくれました。タイミングがあれば出場させたいとずっと思っていました。昨日も前半にタイミングがあったのですが、第1戦目ということである程度固定したメンバーで戦いました。今日はどっちに転ぶかわからない展開で、何か持っているものがあると思っていました。ずっと背中で引っ張ってきた選手がこういう舞台に立つのは、アルファメイトの皆さんも期待していたと思います。その期待に応える智也はやっぱり持っているなと」

長谷川は2012年に越谷の前身である当時NBDLの大塚商会アルファーズでキャリアをスタート。その後はシーホース三河でBリーグ開幕を迎え、サンロッカーズ渋谷、大阪エヴェッサを渡り歩き、2020年に5年ぶりの復帰を果たした。

「B1に修行のような形でいかせてもらい、大阪時代に会長から『帰ってこい。一緒にB1へ上げようよ』と声を掛けてもらって。他クラブからのオファーもありましたけど、会長と一緒にバスケットボールをやるのは僕のなかで特別なもの。過去には(昇格の)チャンスを台なしにしてきた部分もあるので、大塚商会アルファーズが越谷アルファーズになって、B1昇格という最高のストーリーができたのかなと思っています」

「4年目の正直というか、今年も(昇格を)逃したらもうないなと正直に僕のなかで思っていたので。自分では最後のチャンスだと思っていました」。大塚商会時代に飛び込み営業を務めながらバスケットボールをプレーした男が、キャプテンとして古巣をプロリーグトップの舞台に導いた。2019年5月12日にB2昇格、2024年5月12日にB1昇格。5月12日はアルファメイトにとって記念すべき日として語り継がれるだろう。

B1昇格を決めて安堵の表情を見せた [写真]=B.LEAGUE

【動画】長谷川智也が要所で3ポイントを成功

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