精神科特化し訪問診療、家族の支援も 群馬・伊勢崎市にきょう(13日)クリニック開業

「最初からダメだと言わず、できることを柔軟にやっていきたい」と話す浅見院長(中央)とステーションなどのスタッフ

 精神疾患の当事者とその家族を支援する精神科の訪問診療「メンタルプラス家族支援訪問クリニック」が13日、群馬県伊勢崎市羽黒町に開業する。精神科に特化し、家族も支援する訪問診療は県内でも珍しいとされ、認知症やひきこもりの人にも対応する。浅見隆康院長(71)は「当事者や家族のできていることに目を向け、両者の回復を目指したい」と力を込める。

 浅見院長は県立精神医療センター副院長、県こころの健康センター所長などを歴任。精神障害者の家族が対応などを学ぶ「土曜学校」を1996年から毎月、県社会福祉総合センター(前橋市)で開いている。この経験から、当事者の回復には家族が元気を取り戻すことが欠かせないと痛感したという。

 弟の潮田益道さん(65)が「訪問看護ステーションケアーズ伊勢崎南」の事業部長を務める縁もあり、隣にクリニックを開設。患者1人への訪問診療は原則月2回で、浅見院長と相談員が2人で対応する。

 患者の家族らはクリニックの開設を歓迎する。精神障害者と家族らを対象とした学びの場「リカバリーカレッジあんなか」の田口高雄代表(51)は「自覚がなく病院に行きたがらない当事者は多く、訪問診療で助かる家族はいる」と強調。「医師を交えて話すことで、当事者、家族の本音も引き出されるかもしれない」と期待を寄せる。

 県によると、県内の2020年の精神疾患の総患者数は約10万5000人に上ると推計され、認知症の高齢者も25年には11万3000人になると見込まれる。細かなケアをするためには訪問診療の充実が重要となる。県精神保健室は「前橋、高崎に診療所が多い中、伊勢崎に訪問診療のクリニックができるのは意義がある」とする。

 クリニックは伊勢崎市と玉村町の全域、太田市の一部などで訪問診療を予定する。問い合わせはクリニック(☎0270-50-0670)へ。

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