室井滋さん、竹中直人さんが朗読劇も 群馬・前橋市で第52回朔太郎忌 詩作に影響した母ケイに迫る

ケイの生涯について語る松浦さん(左)と梯さん

 群馬県前橋市出身の詩人、萩原朔太郎の命日(11日)を顕彰する第52回朔太郎忌「ボクらはたよりない子どもだから」(同実行委、同市主催)が同日、昌賢学園まえばしホール(市民文化会館)で開かれた。名優による朗読劇や識者の対談を通じて、朔太郎の詩作に影響を与えたとされる母、ケイの実像に迫った。

 第1部ではケイの生涯を描くリーディングシアター(朗読劇)「吾子(あこ)よ」を上演。ケイ役を俳優の室井滋さんが、朔太郎の父で医師の密蔵役を俳優の竹中直人さんが務めた。医師や音楽家を目指すも挫折し、文学の世界で才能を発揮する朔太郎の姿を見守る両親の姿を、時折ユーモアを交えつつ熱演した。

 第2部では、ノンフィクション作家の梯(かけはし)久美子さんと、作家で萩原朔太郎研究会長の松浦寿輝さんが対談。梯さんは自著で、朔太郎の長女で作家の葉子さんを取り上げた際にケイについても記したことがあるという。

 梯さんと松浦さんは文学史上のケイは、葉子さんの視点から見た怖いおばあさんのイメージが強いと説明。その上で梯さんは「ケイさんは15歳で結婚して19歳で母親になり、ものすごい責任を負わせられてしまった」と思いを寄せ、松浦さんも「葉子さんの視点から離れてみると、ケイさんは家の制度の中で苦悩した案外平凡な女性だった」と解釈した。

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