「映画を目的としない映画館を」広島・三原市に映画館を 目標掲げイベント展開する会社員の挑戦

広島県三原市から映画館がなくなって四半世紀近くが経過します。イベントを開いて、映画館復活に向けて挑戦を続ける男性がいます。

JR三原駅そば、市立中央図書館前に広がる芝生広場です。広場には、飲食の販売ブースや、テーブルなどが並びます。平日、水曜日の夕方、仕事帰りの人や家族連れで一帯はにぎわいます。

イベントの発起人は 藤本大介 さんです。映画館のない三原市に、映画館をつくることを思い描いています。このイベントもそんな藤本さんの情熱に多くの人が賛同して行われています…。

藤本さんは、大学進学以降、東京や岩手県で暮らし、2年前、ふるさとの福山市に戻りました。叔父が経営する映画会社「フューレック」の社員になったことから、映画館づくりに挑戦することを決意しました。

藤本大介 さん
「小さい映画館は年々どんどん減っている。大きい映画館は実は増えていて、本当に対極にあるんですよね。何かそういう劇場が経営的に成り立つ仕組みを自分で考えて、チャレンジしてみたいな」

常設の建物を想定していますが、映画館以外の機能も持たせるものだといいます…。

藤本大介 さん
「ひとことで言うと『映画を目的としない映画館』。映画を見に行くだけの場所ではなくて、飲食だったり、カフェだったり、あとは仕事のシーンで使えたりだとか。映画に興味がない、全く見ないという方でも行きたくなるような映画館をつくりたいと思っています」

3年後のオープンを目標にしています。そうして始めたのが広場でのイベントだったのです…。イベントは「MEET CINEMA NIGHT」。2月からスタートし、毎月1回、行われています。

この日も、飲食ブースが用意されました。藤本さんは芝生広場に隣接する施設内へ入っていきました…。そこには大きなスクリーンが。ここで30分程度のショートフィルムを上映します。

藤本大介 さん
「知らない作品とか、自分がこれまで見てこなかったテイストの作品に出会うと、そういう楽しみも提供したいなと」

日が暮れていくにつれ、訪れるお客さんも増えてきます。午後5時20分。この日、最初の映画上映に合わせて10人以上のお客さんが詰めかけました。この日、上映されたは 新海誠 監督の自主作品が、新たな制作陣によって作られた短編アニメでした。

普段、映画館に行くのに福山へ通っている三原市民は…。

記者「三原に映画館がないというのはみなさんにとってどうですか」
来場者「ちょっと遠い…。不便…。遠いところがあるから、もうちょっと近いところ」
来場者「(三原に映画館ができれば)友だちで楽しくワイワイ行けそうです」

およそ300人が来場しました。このイベントは来年3月ごろまで続ける方針です。イベントが済んでも、息つく暇なく次回以降の上映作品についてフューレックの社員と打ち合わせです。

藤本大介 さん
「4月の3作も来週頭にはディスクとなって…」
「7月とか8月とかは、違うことをはさみつつ、それこそアニメだったりとか」

方向性が決まったようです。これからのイベントではどのような映画を見ることができるのでしょうか。

三原市内には映画館がなく、地元の人たちは、福山市や東広島市の映画館に出かけているそうです。「三原市史」によりますと、大企業「帝人」の工場誘致に伴う建設工事で、多くの人たちが市へ入ってきて、繁華街ができました。

かつての映画館「帝国劇場」です。市史の記述だけでも市中心部には、5つの映画館が確認できます。しかし、時代の移り変わり、最後の映画館が2000年に閉館し、三原市から映画館が消えてしまったのです…。

この日、三原市中心部に藤本さんの姿がありました。三原帝人通り商店街振興組合の 石井克昭 理事長に協力してもらって、2000年に閉館した最後の映画館「シネパティオ」の見学をすることになったのです。

藤本大介 さん
「映画館の扉ですね」

映画館はビルの2階と3階に入っていました。こちらは2階部分です。奥にスクリーンがあった小さめの部屋だったようです。

藤本大介 さん
「カラオケルームだった感はありますね」

3階は、さらに大きな劇場になっていたことがうかがえます。映画館が閉館となった後、カラオケを楽しむ場所になったり、現代アート作家の制作場所になったりして、映画館の面影は薄らいでしまっています。

さらに、4階にある映写室も見学します。

石井克昭 さん
「見えるでしょ。ここから、だから、たぶんこう…」
藤本大介 さん「あ~、ここからやっていたんですね」
石井克昭 さん「上映してたんだろうなあと」

映写室には往時を物語るものが残されていました…。

石井克昭 さん「これが映写機でしょ」
藤本大介 さん「うわっ、これ見る人が見たらめっちゃ興奮するやつじゃないですか」

石井克昭 さん「昨日も夜のイベントやってらっしゃったじゃない」
藤本大介 さん「そうですね。昨日も第3回目を…。ちょっと雨でしんどかったんですけど、あれも繰り返しながら、そういう映画館づくりのPRというか、ぼくもいろんな人と出会いながら、経験を積みながらというのを」

藤本さんにとって、シネパティオはどう映ったのでしょうか。

藤本大介 さん「中、カラオケになっちゃっていたんで、映画館の雰囲気を感じるというよりかは、この場所にこう、最後の映画館があったんだなあという感じですね。数年後に三原に小さいながらも映画館を復活させるというのが目標で。映画という文化は自分自身も好きだし、それを求めている市民の方も多くいらっしゃると思うので…」

どのような映画館が三原のまちに姿を現すのか、藤本さんの挑戦は始まったばかりです…。

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