SAGAアリーナ開業1年 来場者49万人、想定上回るイベント数 多目的アリーナ、県内外で認知

開業から1年を迎えたSAGAアリーナ。スポーツイベントでの最多入場者数は、佐賀バルーナーズと横浜BC戦で記録した8591人だった(モニターの人数は速報値)=2023年12月

 佐賀県が佐賀市日の出に整備した九州最大級の多目的アリーナ「SAGAアリーナ」が、オープンから1年を迎えた。開業後の来場者数は49万3537人だった。イベント数は67で、うちコンサートや学会などの大型イベントが23。開業前、県は大型イベント数を「年間10回前後」と想定していたが、大きく上回った形。「1年目からスポーツに特化しない多目的アリーナとして県内外に認知されたことは大きな成果だ」としている。

 アリーナは昨年5月3日にプレオープンし、同13日に正式開業。10月に開幕するSAGA2024(国民スポーツ、全国障害者スポーツ大会)開催を契機に整備されたが、当初から大会後を見据え、観客席8400席の「エンターテインメント空間」を目指した。建設費は257億円。

 開業後1年のイベント数はスポーツ系が33、学会や展示会が15、ライブなどエンターテインメント系が8、その他が11。県によると、イベントの準備や撤収、点検など含めると「(年間営業日数の)9割程度は稼働していた」という。

 アリーナ開業と同時に、バスケットボール男子の佐賀バルーナーズがBリーグ1部に昇格し、相乗効果を発揮した。バルーナーズの平均入場者数は5293人で、これは全38クラブ中、上位5番目だった。

 県によると、利用者の満足度は高い。最大勾配35度の観客席は「4階からでもステージを近くに感じる」と好評で、イベントの裏方も「床面が土間コンクリートで作業動線も工夫されている」と評価する。

 アリーナに来場者用の駐車場がないことから、周辺の店舗や商業施設への無断駐車が問題となった。県は「商業施設からの苦情はほとんどなくなり、マナー違反の意識が浸透している。バルーナーズの試合など県内客が多いイベントでは佐賀駅から歩くスタイルが定着しつつある」と話す。

 ベビーカーを押す利用者からの声を反映し、3歳未満の子どもを同伴する場合には、事前予約で敷地内の駐車場を利用できるようにした。多い時で30台ほどの予約が入る。当初、館内の飲み物売り場が混雑していたのも運営を見直した。イベント会社の指摘を受けて4階通路の照明を増やし、作業の安全確保を図った。「さまざまな課題については随時、ソフト面の運用改善を進めていく」(県)。

 当初、県が懸念していた経済効果を受け止める民間側の反応も出始めているという。2千人規模の学会で同じ弁当を提供できる業者が県内は2カ所程度だったが、製造ラインを増設するなどして供給態勢が整ってきた。大型イベントのお土産売り場の開店時間も柔軟に対応。来場者向けに、周辺の個人や事業所が空きスペースを駐車場として貸し出す動きも広がっている。

 全国各地で大型アリーナの建設ラッシュが続く中、最新設備を誇るSAGAアリーナも「先行者利益はいつか失われていく」と県の担当者。「県が造ったアリーナならではの強みを生かし、情報収集に努めながら、イベントの種類ごとに異なる来場者の性別や年代、消費行動を分析して経済効果を最大化していく」と課題を口にする。

 山口祥義知事は「『佐賀だから』という(後ろ向きの)発想ではなく、佐賀から時代を切り開く思いで造ったアリーナ。県民がさまざまな楽しみ方で一緒に盛り上げ、息吹を吹き込んでくれたことに感謝したい」と話す。(栗林賢)

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