中総体の地域クラブ参加条件 なぜ競技ごとに違う? 難しい教育と持続可能性の両立…長崎の事例

 中学総合体育大会(中総体)で、地域スポーツクラブの出場条件が競技ごとに異なり、分かりにくい-。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」に県内の男性から投稿が寄せられた。部活動改革の一環で、昨年度からスタートした地域クラブの中総体参戦。県中体連に取材すると、部活動での感謝、マナーといった教育的効果を担保しながら、持続可能性を探る難しい事情があるようだ。
 投稿した男性は、県内で中学生のスポーツを指導する立場。中総体への地域クラブの出場条件が統一されていない点が気になるという。例えば、バスケットボールは、部活の地域移行の受け皿として発足したクラブしか出場できないが、体操(団体)、卓球(同)、剣道(同)などは原則どのクラブでも出場できる。その場合、「県のガイドラインに沿った時間制限を設けて練習している部活動のチームとこうした制限のない民間のクラブチームが同じ土俵で競うことになり不公平」と訴える。
 持続可能な部活動という本来の趣旨から逸脱し、民間クラブが広域から有能な選手を集めてチームを編成するような勝利至上主義に傾かないかとも危惧する。
 県中体連によると、地域クラブの中総体への参加条件を定めた細則は、全国中体連、九州中体連の細則を踏襲。参加条件のばらつきは全国、九州も同様という。濵崎大輔理事長は「仮に本県独自の条件を設けたとしても、九州大会、全国大会に勝ち進んだチームが条件を満たさずに出場できないといった事態が起こりうる」と説明する。
 地域クラブが、中総体出場を登録申請する際には、国のガイドラインを順守するようチェック項目を設けている。これにより、学校部活動と極端な差が生じないようにしているが、実際に順守しているかを個別に確認するのは難しく「最終的には指導者ら大人のモラルに委ねられる」とする。
 九州内の他の県中体連も基本的に全国・九州版の細則にならう。ただ、取材を進めると、一部の県では地域クラブの出場枠を各競技1チームに制限したり、“勝利目的”の急造チームを防ぐため選手移籍後は一定期間の大会出場を禁じたりと独自のルールを設けていた。いずれも現場の意見や競技個別の状況を踏まえ、手探りでルール作りを進めている段階だ。
 県中体連の修行勝則会長は「競技ごとに出場条件が異なるのは、勝利至上主義に陥らないように各競技が大会運営の在り方を模索しているからだ。部活動の教育的意義をしっかり継承しながら、今後も部活動が持続していくための地域移行の形を見極めていきたい」と強調した。

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