不登校児に戻らない日常 コロナ5類移行1年 県内でも増加の一途、焦りや不安で状況悪化も

 新型コロナウイルスの5類移行から1年がたった中でも、日常に戻れない子どもたちがいる。一斉休校やオンライン授業、学校行事の中止・縮小-。コロナ禍に翻弄(ほんろう)された教育現場では不登校の児童生徒が急増した。「行きたくても行けない」。焦りや不安が状況を悪化させてしまう場合もある。識者は「改善のスピードは一人一人異なる。学校復帰だけでなく、本人が望む解決策を考えることが必要」と指摘している。

 定時制高校に通う栃木県那須塩原市の男子生徒(16)は、不登校となった過去を引きずっている。

 2020年4月の中学校入学の直後、コロナの影響で一斉休校となり、約2カ月後に学校が再開しても足が向かなかった。「新しいクラスに合わないと思った」。休校前、マスク越しに友達と近距離で話していたことを注意され、学校を窮屈にも感じた。

 不登校について文部科学省は「問題行動ではない」とする。それでも「学校に行かない自分はカスだ」と劣等感に苦しんだ。「コロナがなければ普通に登校していたのかな」と今でも考える。「心の傷はまだ消えていない」と口にした。

 宇都宮市、通信制高校1年の男子生徒(15)は小学6年生だった20年春、休校明けに欠席が増え始めた。もともと学校の集団行動に苦手意識があった。「行かなければ」と思っても、心が追い付かなくなった。

 不登校が続いていた中学3年の5月、5類移行を迎えた。周囲が少しずつ日常に戻る中、外部との接触はほとんどないまま。進路への不安から自傷行為に至るまで追い詰められた。

 悩んだ末に今春、オンライン授業が可能な通信制へ進学した。「少しずつ外の世界と関わりたい」と踏み出した。緊張で授業を休むこともあり、まだ“心”のリハビリの途中だ。

 文科省によると、県内公立小中学校の不登校児童生徒はこの10年間、毎年100~270人の幅で増加。コロナ禍となりさらに急増した。22年度は前年度比949人増の5137人で過去最多を更新した。県教委は「原因は複合的」とし、「コロナ禍の影響による生活リズムの乱れや欠席への抵抗感の薄れ」などを一因と分析している。

 認知行動療法を用いた不登校支援を行う作新学院大女子短期大学部の矢野善教(やのよしのり)准教授は「不登校であることをネガティブに捉え、自己肯定感が低下する子どもは少なくない」と話す。「学校外の学びの場の活用を含め、改善に至るきっかけは多様。本人と保護者、学校が同じ方向を向いて進むことが求められる」としている。

不登校になった経験を振り返る男子生徒=5月上旬、県内

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