生産者「納得するしかない」諦めに近い声も リンゴ巨額盗難で被害農協が説明 青森・弘前市

 青森県弘前市悪戸のつがる弘前農協河東地区りんご施設で昨年6月に発覚したリンゴ盗難事件を巡り、同農協は14日夜、市内4カ所で組合員説明会を非公開で開き、被害の全容や今後の補償方針について説明した。リンゴを同農協へ出荷する生産者からは「説明に納得するしかない」「実行犯に賠償させないと、どうにもならない」などの声が聞かれた。

 盗難事件を調査した第三者委員会の最終報告書などによると、元従業員3人を含む5人の実行犯は、2020年2月ごろから23年6月9日までの間、同施設にあったリンゴを盗んだ。被害額は総額2億2467万円で、被害の補償対象となる組合員数は3千人超。

 同農協によると、被害の補償に資産を充てるため、組合員向けの次の配当は、約10年ぶりに無配当となる見通しだ。被害額と補償対象者数から単純計算すると、補償額は1人平均7万~8万円。出荷量が多い生産者では、補償額が100万円近くに達する。

 同市五代の「岩木りんごプラザ」で行われた説明会には約30人の生産者が出席。同農協は第三者委員会の報告書を基に、被害の概要や補償対応を説明した。同市の清藤良治さん(62)は終了後の取材に対し「大変な被害額だ」とし、「組合員が涙をのまないよう、補償や再発防止を含めしっかり仕事をしてほしい」と求めた。

 生産者からは諦めに近い声も。同プラザで説明を聞いた男性(65)は「相手(実行犯)が返さないとどうにもならない」、別の男性(60)は「騒いだとして、その結果農協の経営が傾くとどうなるか。結果的に自分たちの首を絞めることになる」とつぶやいた。

 一方、同農協の説明に一定の理解を示す組合員もいた。河東地区りんご施設の説明会に出席した70代男性は「(農協の説明は)納得できる部分が多かった。リンゴは毎日動いているので、盗難に気づけなくても仕方がない」と話した。

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