デローザンがうつ病との闘いを赤裸々に綴った回顧録『ABOVE THE NOISE』を出版

シカゴ・ブルズの頼れるスター、デマー・デローザンがうつ病との闘いを記録した回顧録『ABOVE THE NOISE』を9月10日に出版する。

6度のオールスターは、今シーズンも頼れる男だった。ザック・ラビーンがシーズンの大部分を欠場する中、背番号11を背負うガード/フォワードは、チームリーダーとなる平均24.0得点、5.3アシストをマーク。最優秀クラッチ選手賞では、ステフィン・カリーと僅差で2位に選出されており、類稀な勝負強さで白星を手繰り寄せた。

しかし、そんなデローザンの人生は決して順風満帆ではない。トロント・ラプターズに在籍していた2018年2月、同選手は自身のSNSを通じてうつ病であることを公表。『Toronto Star』でのインタビューでは、当時の心境を以下のように語っている。

「いろいろな夜がある。僕のことを知らない人が僕を見たら、とても静かな人間だと思うだろう。僕はある意味、自分だけの空間にいて、どんなことにも対処できるよう、寡黙でいるように心がけている」

「結局のところ、僕たちはみんな人間なんだ。だから、僕は出会うすべての人を同じように見る。君が誰であろうと気にしない。通りがかった人でも、世界的な有名人でも、僕は同じように敬意をもって接するよ」

デローザンの告白は、NBAにも大きな影響をもたらした。同選手に啓発されて、ケビン・ラブもうつ病であることを明かし、ラプターズでチームメートだったフレッド・バンブリートは、「彼は話し出すことで、1人で状況を変えた。リーグや選手、コーチングスタッフたちに与えた影響は大きい。大きな勇気が必要だったし、僕の個人的な生活にも助けとなり、僕が無知だったことにも気付かされた」と、デローザンの行動を讃えている。

本書は、世界中の人々が1人で苦しむことがないよう、デローザンが希望を込めて執筆したものだ。同選手の生まれ故郷であるロサンゼルス南部のコンプトンは、ギャングたちがひしめくアメリカで最も犯罪率の高い地域。版元である『Penguin Random House』によれば、デローザンは貧困のなかで生活し、ギャングの抗争で友人を失うことは珍しくなく、廃れた学校の体育館で自己を証明しようと努力をしていた毎日の裏には常に疑問がついて回ったという。

デローザンは、『ABOVE THE NOISE』の発表にともない、以下のコメントを寄せている。

「僕たち男性、特に黒人男性は、精神的な健康についてあまり口にすることはない。周りのみんなが明らかに気づいていても、物事がうまくいっていないことを認めるのは簡単ではない。そのような状況がどれほど有害なのか、僕は知っている。自分自身でそれを経験し、頭と心が炎と怒りでいっぱいになるまで、すべてを隠し続けてきた」

華々しい成功ばかり報じられるNBAの世界だが、デローザンはベッドから起き上がれないほどの精神的な苦しみを経験している。本書では、ラプターズにドラフトされた頃の気持ち、20歳のルーキーがベテランとプレーする圧力、ロールモデルを失う痛みなどを振り返る。また、カバーデザインにもあるとおり、リリースにともないサンアントニオ・スパーズ時代の恩師であるグレッグ・ポポビッチが序文に寄稿している。

どんなに幸せに見える人でも、誰しもが苦労や悲しみと闘いながら生きなければならない。『ABOVE THE NOISE』は、そんな現代人に優しく手を差し伸べ、苦難を乗り越えるヒントを与えてくれるだろう。

文=Meiji

【画像】SNSで表紙デザインを公開

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