「救命ボートを備えていない船舶の航行を認めるようなもの」 住民グループは反発 島根原発2号機運転差し止め仮処分却下

住民の訴えは却下されました。
山陰両県の住民が島根原発2号機の運転差し止めを求めた仮処分で、広島高裁松江支部は、15日、差し止めを認めない決定をしました。
裁判所がそう判断したポイントはどこだったのでしょうか?

運転差し止めの仮処分を申し立てていたのは島根鳥取両県の住民グループ。

島根原発には、近くに宍道断層や活火山の三瓶山があるのに加え噴火の被害想定が不合理で、半径30キロ圏内の6市45万人が対象となる避難計画にも実効性がないなどとして、去年3月、2号機運転差し止めの仮処分を求めていました。

午前10時すぎ、注目の裁判所の判断は、申し立ての却下。
運転差し止めは認められませんでした。

申立人の一人・土光ひとしさん
「稼働できるものはどんどんやっていく。そういった国の方向、方針。それは司法にも何らかの影響を与えているのかな」

広島高裁松江支部は、申し立て却下の理由として、
・原発の安全基準は学識経験者らの検討を踏まえて原子力規制委員会が作ったもので、地震や火山活動に対する中国電力のリスク評価には全体として合理性がある。
・重大事故が発生する具体的危険性が示されたとはいえないので、避難計画の実効性を問うことはその前提を欠いている。
などとしています。

住民グループの弁護団 大河陽子弁護士
「原発事故時に機能しない避難計画しかなくとも、原発を稼働することを認める本決定は、救命ボート等の救命設備を備えていない船舶の航行を認めるようなものであり、住民らを見捨てるものである」

一方の中国電力。
島根県などの地元自治体による同意が出そろったことを受け、当初、今年8月の再稼働を見込んでいましたが、安全対策工事の長期化などの理由から、今年12月への延期を発表しています。

今回の裁判所の決定について中国電力は。

中国電力 コンプライアンス推進部門 高見和徳総務部長
「2号機の再稼働に向けて安全を第一とした対策工事を確実に進めていくとともに、地域の皆様から信頼される発電所を目指してまいります」

また、島根県の丸山知事は「中国電力に対して引き続き必要な安全対策工事や検査を進めていくよう求めていく」旨のコメントを発表しました。

能登半島と同じ山がちの半島に位置し、さらにその間近には山陰地方最大の人口集積地が広がる島根原発。

事故を起こさないという中国電力の安全確保の努力はもちろんですが、能登半島地震の教訓を踏まえると避難計画の実効性などにもより厳しい目が向くのは当然といえ、住民の不安払しょくに向けた一層の努力と説明が求められます。

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