木村拓哉『Believe』視聴率サゲサゲ傾向…設定の粗さだけじゃない、いまいちハマれない2つの理由

5月9日(木)に第3話が放送された木村拓哉主演『Believe―君にかける橋―』(テレビ朝日系)の評判がかんばしくない。

視聴率は第1話が世帯11.7%/個人6.8%、第2話が世帯10.1%/個人5.9%、第3話が世帯9.6%/個人5.8%と右肩下がり(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。

いまは見逃し配信もひとつの視聴スタイルとして定着しつつあるので、単純に視聴率の高低だけでは判断できないものの、下落し続けているということはリアルタイム視聴勢が離れている証拠。

一方、TVerのお気に入り登録数は78.0万(5月14日現在)と100万の大台にはほど遠いため、見逃し配信で大人気になっているというわけでもなさそうだ。

せっかく壮大なスケールで描かれているのに、いまいちハマれない……その理由を考えてみたい。

木村が演じる主人公は、大手ゼネコンの土木設計部長で、橋の設計を手がける狩山陸。

しかし、狩山が設計した建設中の橋で、死傷者を出す大規模な崩落事故が発生。設計ミスが原因ではなかったにもかかわらず、社長(小日向文世)に懇願された狩山は会社を守るために真相を隠ぺい。全責任をかぶり、実刑を喰らってしまう。

けれど、妻(天海祐希)ががんを患い余命宣告されていることを知り、無実の罪を晴らすために刑務所から脱獄して……というのが第3話までのストーリーである。

橋の建設工程、裁判の判決、脱獄計画などに対して、専門家から粗を指摘されており、設定の甘さが露呈している状態だが、評判がよろしくないのは、大きく2つの理由があるように感じる。

■理由(1)さほどショッキングな展開が起こらない

1つめは、さほどショッキングな展開が起こらないこと。

エンタメ作品において、味方だと思っていたヤツが裏切ったり、逆に悪そうなヤツが実はいい人で助けてくれたりするのはセオリー。要するに、そういった意外性には、ありがちすぎてたいして驚きもないのだが、『Believe』ではそんなマンネリな “衝撃展開” が多用されているのだ。

たとえば、物腰が柔らかく狩山のよき理解者といった雰囲気だった社長は、なにか企んでいる描写があるし、「私は味方です」と言っていた狩山の担当弁護士(斎藤工)は、狩山の気持ちを裏切る行動に出ている。逆に、受刑者たちから恐れられており、冷酷非情だと思われていた刑務官(上川隆也)が、狩山の脱獄の手助けをしてくれた。

脱獄した狩山は、軽薄な笑顔が薄気味悪い警視庁の刑事(竹内涼真)に追われているのだが、この流れでいくと、刑事がのちのち狩山の協力者になるなんてこともありそう。

『Believe』というタイトルなので、誰を信じればいいのかというストーリーにしたいのだろうが、いまのところ、だいたい予想の範囲内の衝撃展開ばかりなので、視聴者たちもいまいち没入できないのかもしれない。

■理由(2)あまり崩落事故の真相に興味が沸かない

2つめの理由は、あまり崩落事故の真相に興味が沸かないこと。

死傷者が出た痛ましい大事故であることはわかるし、裏でなんらかの陰謀がうごめいているのかもしれない。けれど、一例だが「家族・恋人が何者かに殺された!」のような、わかりやすい謎が提示されているわけではないので、狩山に感情移入しづらいのではないか。

背後で操っている黒幕を暴くことが目的のミステリーなのか、主人公が自分をハメた相手をギャフンと言わせる復讐劇なのか、そういった明確なテーマが示されておらず、全体がぼんやりしているため、何を描こうとしているドラマなのかもよくわからない。

今のところ、最後に狩山の前に立ちはだかる可能性がいちばん高そうなのは小日向演じる社長だが、社長がそのままラスボス的ポジションになるとしたら、あまりにひねりがなさすぎる。

もしかすると、まだ発表されていない大物俳優が追加キャストとして投入され、重要キャラとして物語のゲームチェンジをしてくれるのかもしれない。

――公式サイトの第4話のあらすじには、下記のような展開が予告されている。

《ありとあらゆる人物が秘密裏に“不穏な動き”を見せ、状況は刻一刻と急転。誰もが予想しなかった“とんでもない事態”にまで発展し…!? その先に待ち受けるのは希望か、絶望か――狩山にとって“忘れられない一日”が始まる!》

“とんでもない事態” というのが、本当の意味で予想を裏切るショッキングなストーリーになっていることを期待したい。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

© 株式会社光文社