今季2度目の5失点で不甲斐ない敗戦。鬼木達監督や家長昭博らが語る今の川崎に改めて必要なモノとは

[J1第14節]鳥栖 5-2 川崎/5月15日/駅前不動産スタジアム

厳しい現実を突きつけられたゲームと言えた。

川崎にとって2節の磐田戦(ホーム/●4-5)に続いて今季2度目の5失点での敗戦だ。ただ、多くの選手が入れ替わっていた開幕当初の磐田戦とは状況が異なる。

アウェーでの14節の鳥栖戦は、黒星が続いたシーズン初めからコツコツと積み上げ、5試合負けなし(2勝3分)で、今季のリーグ戦で初の連勝を狙った一戦であった。

「勝たなくてはいけない試合で勝てなかった。そこに尽きると思います」

鬼木達監督の言葉にも悔しさがこもっていた。

指揮官は5月を巻き返しの機会と捉え、チームに強く求めてきた。そのなかでの完敗である。連戦中でのアウェー戦とあってコンディション調整は難しかったのかもしれない。13分にCKからCB高井幸大が先制点を挙げるなど、試合の入りは順調だった。それは指揮官も認めている。

しかし、良い入りが逆に気付かぬうちに慢心に変わってしまったのかもしれない。

追加点を狙ったうえで、ミスが少しずつ増えると、警戒していたはずの相手のサイドからの展開と、裏を狙ったボールを対処しきれずに次々と被弾。後半は相手の勢いに飲み込まれるように、そして焦りをコントロールし切れずに、時間を経るごとにチグハグさを増して、完敗を喫した。

「すべて自分の力不足だと思っています。当然いろんな形でのミスがありましたので、そこも含めてトレーニングのところから突き詰めていかないと、本番でこうなると思います。そこを含めて自分がもっとマメジメントすべきだと感じます」

そう敗戦の責任を引き受けたのは指揮官である。

【動画】鳥栖×川崎のハイライト
一方で「現実として良い試合もあるし、悪い試合もあるのが今のチームの現状だと思いますし、負けている試合と勝っている試合がこれだけあって、試合中の安定感がなく、良い時は良いけど悪い時は悪い。これが力だと思うし、簡単にはいかない」と語る家長昭博は、自らを含め選手たち個々の力不足も指摘する。

「何を持ってチーム全体のせいにするのか、そこは僕はよく分からなくて。僕のミスは僕個人のミスだし、僕ができないことは、僕の個人的な力のなさだと思う。やれることをみんなが増やしていかないと、これだけ失点しているのは、守備だけの責任ではなく、個々の力が足りないということに尽きると思います」

そして愛のあるメッセージを送る。

「僕はもう38ですが、20代の選手らは、日本代表になりたいだとか、Jリーグで優勝したいだとか、海外に行きたいだか、そう思っている選手が何人いるかが重要だと思いますし、そのへんの各々の目標の高さは強くなっていくうえで絶対的に必要だと思います。

強かった時に比べてその辺りが少し足りないのかなという想いもありますし、自分はまだ優勝したいし、その気持ちを持っている。足りないのはチームなのか個なのかと言われたら、僕は個のほうの気がします」

試合後にはサポーターから背中を押してもらうチャントとともに叱咤激励の言葉も受けた。その点でも家長は奮起を誓った。

「今の順位と今の内容は、ブーイングされても仕方のない状況だと思います。その現実は受け止めていますし、お金を払って観に来てもらえるだけの試合をしていないとも感じます。それを受け止めなくてはいけないと思います」

14試合を終えて4勝4分6敗、首位と勝点13差の13位。

チーム誰もが逆転優勝への希望を捨てていないが、実現するには、鳥栖戦のような不甲斐ない試合をもうすることは許されない。

そのためにも指揮官や家長らの言葉を受けて、個々がどう自らにベクトルを向け、高い意識を持って臨んでいくのか。

真面目な選手が多く、真摯に練習に取り組み、意見を出し合う機会も増えている。例年通り今オフも主力が抜け、新陳代謝を図っているだけに粗さが出てしまうのは仕方ない部分でもある。

それでも指揮官は「失点に対する受け入れ方というような部分は、“仕方ない”で済ませてはいけないもの。ただ、それが通ってしまっているようなところは、自分の指導の問題だと思いますし、失点に対しても厳しさを持たなくてはいけません」とも語る。

本来は取られても取り返すチームである。そのコンセプトにブレはなく、日々、質の向上に取り組んでいる。その流れは継続しつつ、誰もが1点の重みをよりシビアに考え、責任感を増すことができるのか。理想を追い求めつつも、覇権奪回を目指すうえで、覚悟がより必要になりそうだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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