職員自殺で神戸市に1.2億円賠償命令 教員間暴行対応で「強い精神的負荷」 神戸地裁判決

神戸地裁=神戸市中央区橘通2

 2020年に神戸市教育委員会事務局の男性職員が自殺したのは、前年に発覚した市立東須磨小学校の教員間暴行・暴言問題への対応による長時間労働や精神的負荷で生じた精神疾患などが原因だったとして、兵庫県内に住む男性の妻ら遺族3人が市に約1億3800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、神戸地裁(島岡大雄裁判長)で言い渡された。「産業医への診察を受けさせるなどの義務を怠った」などとして市の安全配慮義務違反を認め、約1億2千万円の支払いを命じた。

 原告側代理人弁護士が明らかにした判決などによると、男性は19年4月に初めて同事務局に異動し、教育委員との窓口として連絡調整を担当していた。教員間暴行・暴言が社会問題化した同10月の時間外勤務は月92時間を超え、20年1月に精神疾患を発症し、同年2月に自殺したとされる。

 判決理由では、問題を巡る第三者委員会への資料提供の漏れが起きた際、不信感を抱いた教育委員が男性らに苦情のメールを送っていたことなどが述べられ、「窓口である職員が責任を感じるのは無理からぬことで、強い精神的負荷があった」と説明した。

 また、公務災害認定に関する調査では、教育委員と同事務局上層部の間で「板挟みだった」と別の職員から回答があったとした。

 市側の「考え得る限りの対応を尽くしていた」などの訴えは「職員の負荷の強さや睡眠薬を飲んでいる旨の申告を踏まえた対応として十分といえない」などと退けた。

 男性の妻は「市の責任を認めていただき、夫の無念を晴らすことができたと思う。二度とこのようなことが起こらないように、職員の健康管理の徹底を願う」とコメントした。

 市教委は「職員が亡くなったことは大変無念。裁判については、当方の主張が認められなかったことは誠に残念で、判決文を精査し適切に対応したい」としている。

© 株式会社神戸新聞社