映画「家出レスラー」原案・岩谷麻優×主演・平井杏奈 運命の出逢い、麻優マユ対談!

WEEKEND女子プロレス♯12

<写真:新井宏>

スターダムのアイコン”岩谷麻優の半生が実写映画化され、5月17日(金)より全国公開される。そこで今回は映画『家出レスラー』の原案となった岩谷麻優と、岩谷マユを演じた主演の平井杏奈の対談をお届け。引きこもり生活から上京しプロレスラーになるも、最初はその「ポンコツ」ぶりからなかなか芽の出なかった岩谷。そんな岩谷に自分を重ね、オーディションで主役の座を勝ち取った平井。運命的とも言える2人の出逢いを、この対談から感じてほしい。

<写真:新井宏>

――本編をご覧になっていかがでしたか。

岩谷「喜怒哀楽が全部に詰まってると思いましたね。真剣なところ、笑えるところ、上映時間中、感情がジェットコースターみたいになりましたね」

――岩谷選手は、演じられている自分自身を見ることにもなりますよね。

岩谷「そうですよね。一応フィクションなんですけど、だいたいがけっこう実話で。『なんで練習来ないんだ!』とか『スリングブレイドできるもん』とか、ああ、こんなことあったなあとか、グッときて泣いちゃうようなシーンもあるし。ただ、自分の話とか関係なく、映画としてすごく完成度が高いと感じました。自分の映画じゃなくても、ふつうに楽しめましたね」

――マユがんばれ!と思ったのでは?

岩谷「そうそう(笑)」

©映画『家出レスラー』製作委員会©World Wonder Ring STARDOM

――平井さんは、ホンモノに見られていると思うとどうですか?

平井「それが一番ドキドキかもしれないです。岩谷マユ役を演じるにあたって、岩谷麻優選手本人やファンだったりに、『やっぱり岩谷麻優だな』と思っていただきたいし、ファンの方のなかには岩谷選手本人が(演じるところを)見たいという気持ちもあったと思うので、自分が岩谷麻優をやらせていただく意味を感じつつやらせていただきました。いまこうして完成して、岩谷選手に『おもしろかった』『よかった』と言ってもらえてホッとしているし、ホントにうれしいです」

――岩谷選手は自分の半生が映画化されると知って、どう思いましたか?

岩谷「最初は不安しかないですよ。いままでも、自分の人生をおもしろいと言ってもらえることがすごく多かったんですね。だけどあらためて映画になると大丈夫なの?って。ホントに自分の人生っておもしろいのかなって、不安になりますよね」

平井「いや、おもしろいです(笑)」

岩谷「(笑)。初めて聞いたのは移動中の車の中だったんですよね。軽く言われたので、『ああ、そうですかあ、(映画化)されればいいですねえ』なんて、携帯いじりながら軽く答えたんですよね。あのとき、『いやいや自分なんか映画になんかならないです!』『いいですそれ、やらないでください!』なんて言わなくてよかったなって。もし面と向かって真剣に言われたら断ったんじゃないかな。『自分の人生なんておもしろくないんでホントに』『ほかの人の方が絶対におもしろいから、自分なんかいいです』って言ってたでしょうね(笑)」

©映画『家出レスラー』製作委員会©World Wonder Ring STARDOM

――映画化が決まり、岩谷選手役のオーディションが始まりました。平井さんは、なぜ応募したのですか?

平井「たまたまオーディションを見つけまして、その瞬間、ビビッときたんですよ。ホントに電流ビリビリみたいな感覚があったんです。そこから岩谷選手のことを調べさせてもらって、自伝があるというので即座に買って、ホントに一気読みしました。そしたら、自分との共通点をすごく感じたんですね。歩んできた環境や境遇、経験とかすごい重なる部分があってビックリしました。自分にもポンコツ時代があって」

――平井さんもポンコツだった?

平井「ハイ(笑)」

――平井さんは2010年からアイドルグループ、Tokyo Cheer② Partyに所属。スターダムは11年に旗揚げで、岩谷選手は一期生でした。同じような時期ですね。

平井「ハイ、私も一期生で、(17年の)解散まで所属してました」

――メンバーが入れ替わるなかで、ずっと同じグループで活動していたのですね。

平井「ええ。その間にたくさんの仲間がやめていったりとか。もうずっと泣いてたんですよ。ホントに、別れがつらすぎて。スタッフさんにも『一期生で一番早くやめると思ってた』『一番長くいたのが信じられない』とよく言われたりしたので、けっこうエピソードとか似ているところとかあるんですよね」

<写真:新井宏>

――これはもう運命としか思えない。

岩谷「ホントにそう思う!」

――平井さんは、プロレスはご存じでしたか?

平井「知らないわけではなかったんですけど、試合を(会場で)見たことはなかったです。でも、スターダムの中にアイドルやってたときにライブとか一緒に出ていた選手がいて映像を見たりとかして、かっこいいなという漠然とした印象はありました。それがオーディションきっかけでプロレスに出逢って、どっぷりとプロレス大好きになりましたね」

――オーディションには岩谷麻優を演じるつもりで応募したと思います。最終候補者がリングに上がり紹介されたときがありましたが、そのときに岩谷選手のコスチュームを着てきたのが平井さんだったんですよね。

平井「ハイ、そうなんです」

岩谷「その日、(コスチュームにつける)尻尾を忘れてきたんですよ。それで、『あの~、平井さんですよね。尻尾貸してもらえませんか?』と、杏奈ちゃんに借りて試合したんです」

平井「そうでした。作りました」

岩谷「あれ、自分で作ったんだ!」

平井「ハイ、自作です」

岩谷「へえ~」

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©映画『家出レスラー』製作委員会©World Wonder Ring STARDOM

――岩谷コスチュームで気合入ってるなと思いました。

岩谷「そう(笑)。印象に残ってますよね」

――その意気込みが合格に効いたのかもしれませんね。

平井「尻尾つけといてよかったです(笑)」

岩谷「ただ、麻優が『両国国技館』って言えないのに杏奈ちゃんは言えちゃってね(笑)」

――活舌よく言えたのはマイナスですね。

岩谷「そうそう」

平井「(笑)。自己PRのときなんですけど、言いたいことを2,3分くらいにまとめて用意していたんですね。それが当日、40秒まででお願いしますと言われて、これは無理と思ってとっさにエアーでジャーマンスープレックスやったんです。やったこともないのに」

岩谷「へえ、そうなんだ」

――そのときから岩谷選手になりきっていたと。

平井「とっさにやりました。でもいま思い返すと、映像見られないくらい恥ずかしい(笑)。あの映像、誰か持ってたら削除してください!」

岩谷「どこかに絶対あるよ(笑)」

<写真:新井宏>

――それが決め手になったかはわかりませんが、プロレスラー役なので試合シーンもある。そこも自分で演じたわけですよね。

平井「そうですね。朱里選手がプロレス指導、監修で、準備体操、基礎から技までホントに全部教えていただきました。でも最初は絶望的にダメで、監督もこれで映画作れるのかなと思うくらいプロレスができなくて。ちょっとの動作でも息切れしてリングにへばってて、ホントにこの先どうなるんだろうみたいな感じだったんですよ。それでもなんとか徐々についていけるようになって、朱里選手も一生懸命教えてくださいましたし、プロレスラー役のみんな一生懸命練習させていただいて、なんとか無事にクランクアップまでたどりつけました」

――そういうところまで岩谷選手のキャリアと並行しているような気がします。

岩谷「ねえ。最初から杏奈ちゃんができる人だったら、逆にこっちがイヤになる(笑)」

平井「当時の岩谷選手が腕立て伏せ一回もできなかったという話を聞いたりもしました。岩谷選手にもそういう時代があったんだから、岩谷選手の実際にたどってきた経験が自分の頑張る力でもあったと思います」

――プロレスの動きに加え、岩谷選手にならないといけないですよね。仕草も含めて相当研究したんじゃないですか?

平井「そうですね。試合の映像をたくさん見させていただいて、自分なりにですけど、表情とか受け身の仕方とかもいろいろ研究させていただきました」

――受け身を取るときの表情を意識してるのはすごいですよ。

岩谷「ねえ(笑)。すごいですよね。自分、杏奈ちゃんが何もできない状態のまんまデビュー戦の麻優をやるんだったらすぐできると思うけど、成長して赤いベルトのチャンピオンの岩谷麻優の動きをやらないといけない。それをあんなに完コピできたのはホントにすごいと思う」

<写真:新井宏>

――岩谷選手は、平井さんに何かアドバイスしましたか?

岩谷「アドバイスというか、事前に質問されたんですよね。100項目くらいメモにありましたね。『このときは誰と仲良かったんですか?』とか『どういうふうに思ってましたか?』とか。でも、試合会場の撮影ではほぼ口出しすることがないくらい、自分が見たときにはもう岩谷麻優になっていたので。ただ、後楽園ホールでの赤いベルトの入場シーンだけは、一回自分でやりました」

平井「見せていただきましたね」

――入場を再現し、見本を見せたと、

岩谷「うん。でも一回だけ。それ以外は細かすぎて(笑)。ドラゴンスープレックスホールドのキックアウトを返されるんですよ。その瞬間のブリッジはどうやって崩れるんですか?みたいな。え、そこが質問?って」

――返すのに精いっぱいだから、フォームなど意識していないですよね。

岩谷「そう。そこまで意識してないから(笑)。なので、たぶんこうだと思うんですけどお…みたいな、あいまいな答えしかできなくて」

平井「細かすぎてすいません、ホント(笑)」

岩谷「でもホント、そのくらい全部やってくれてます」

©映画『家出レスラー』製作委員会©World Wonder Ring STARDOM

――正直、映画を見ていくうちに平井さんがプロレスラー岩谷麻優にしか見えなくなってくるんですよ。

平井「うれしい!」

――入場でコーナーに上がったところとかもよく似ていましたね。毒霧を吹かれたあとの表情や、顔面を緑に染めて闘う姿とかも。

平井「(笑)。大切な試合を再現させていただきました」

――試合シーンも含め、どこが大変でした?

平井「無我夢中でやらせていただいたので、どこがとなると難しいですけど、朱里選手が私以外のプロレスラー役のメンバーにも『アナタだったらこういう技がいいと思う』といろいろ考えてくださったのが印象的でしたね。私、岩谷選手のドドンパに一回挑戦したんですよ」

岩谷「そうなんだ!」

平井「だけどメチャクチャ難しくて、全然うまくいかなかったから、ドドンパはなしで、みたいなことがありました」

岩谷「へえ~」

――トライはしたのですね。

平井「ハイ」

岩谷「おもしろいね」

平井「難しかったです」

岩谷「意外と難しいんだよね、あれね」

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<写真:新井宏>

――演技ではありますが、平井さんの試合場面からプロレスラーに向いてるんじゃないかとか、プロレスやったらおもしろいんじゃないかと思いませんでした?

岩谷「思いましたよ。もともと舞台とかやってるから、感情を表に出すことは得意だと思うし、それもプロレスラーの武器でもあるから。運動神経もいいんじゃない? 杏奈ちゃん、プロレス向いてると思うけどな」

平井「(笑)。まあでも、いつか、人生で一回でもいいので試合やってみたいなという夢が『家出レスラー』でできました。いつか実現できたらいいなって。偉い人、お願いします」

岩谷「そんなこと言ったらすぐ決まっちゃうから(笑)」

――そうですね。ホントに決まるかも。

岩谷「よくないよ(笑)」

平井「ホントですか?」

岩谷「よくないよ、ホントにやらされるよ(笑)。もしかして8月とか」

平井「もうちょっと時間をください(笑)。映画の場面とホントの試合は全然違うし、ホントに試合するならマジで頑張るので!」

――演技では決められた動きですが、試合では想定外のこともたくさん起こり得ます。

平井「ハイ、そうですね」

岩谷「でも、麻優の技はできるからね。麻優が欠場とかさ、体調悪くなったら(出て)」

平井「いやいやいや」

岩谷「『岩谷麻優で~す!みなさん、こんばんは~!』って出ちゃう。バレないバレない(笑)」

平井「いやいや。先日IWGP女子の防衛戦も見させてもらって、ホントにあらためて自分が岩谷麻優役をやったのが信じられない。ものすごい試合で、ものすごいレスラーだなとあらためて思いましたね。なので、人生でホントにこんなことあっていいのかくらいの貴重な経験をさせてもらいました」

岩谷「杏奈ちゃんは『家出レスラー』に関わって、人生初の経験をメチャクチャしてるんですよ。リングアナとかゲスト解説だったり」

©映画『家出レスラー』製作委員会©World Wonder Ring STARDOM

――岩谷選手が家出しなかったらこうはならなかった。

平井「そうですね(笑)」

岩谷「家出してよかった! ありがとう、あの頃の私!」

――では最後に、映画のどこを見てほしいですか。

岩谷「自分は2年間引きこもりで、先の人生とか何も見えずにお先真っ暗、自分なんかいなくても誰も何とも思わないでしょという状況のなか、たまたまプロレスをテレビで見て好きという感情が芽生えて、そこから一歩踏み出したことで(プロレスを)13年も続けられて、いまではスターダムのアイコンと呼ばれて映画にもなったり、プロレスに出逢って人生が変わりました。ホントにプロレスのおかげだし、ありがとうの気持ちがあるんですけど、過去の自分と同じような経験をしてる方って絶対にいると思うんですよ。何もすることがない、なぜ生きてるのかわからない、何のために自分がいるのかわからない。つらい、逃げだしたいとか。そういう思いを持ってる方々に、こんなヤツでもここまで人生変えることができたんだから、というメッセージ性もあると思います。自分がプロレスに救われたように、この映画が誰かに刺さって誰かの心に響いてくれたらいいなっていう思いで、この映画を立ち上げました。なので、この映画はプロレスファンはもちろん、むしろプロレスを知らない方に見てもらいたいと思ってますね。いろんな方に共感していただけるんじゃないかなと思うしだいでございます。ウフフ」

平井「私も同じと言ったらアレですけど、生きづらさを感じてる人はホントに多いと思うので、いろんな方の希望となる作品になってほしいし、岩谷選手の奇跡の半生、岩谷選手の魅力と女子プロレスの魅力、存分にたくさんの宇宙一杯に広がっていただきたいと願っています…あ、ハイ」

岩谷「杏奈ちゃん、たまにちょっとポンコツが出るんだよね(笑)」

インタビュアー:新井宏

©映画『家出レスラー』製作委員会©World Wonder Ring STARDOM

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