【高校相撲金沢大会】快進撃、珠洲に元気 飯田、決勝T一番乗り自宅全壊の部員ら活躍

団体決勝トーナメントに向け、気迫をみなぎらせる飯田チーム=金沢市の石川県卯辰山相撲場

 合言葉は「負けとられん珠洲」。19日開催された第108回高校相撲金沢大会(北國新聞社主催)。スタンドにそう掲げられたのぼりに応えるように、能登半島地震で甚大な被害を受けた飯田の3選手が、予選1、2回戦を全勝し、一番乗りで決勝トーナメント進出を決める活躍を見せた。部員2人の自宅は全壊。苦境を覆す高校生の快進撃に、珠洲から卯辰山に駆け付けた家族、金沢に避難する住民たちは、故郷再興への道のりを重ねた。

 「白星で地元を元気にしよう」。選手3人はそう胸に刻み、開会式直後の開幕戦に臨んだ。対戦チームは都留興譲館(山梨)。先鋒の波佐谷兼諒選手(2年)が「緊張したけど、何とかいい流れを持ってきたかった」と相手の上体を起こして寄り切ると、チームは波に乗った。

 中堅の船橋竜乃祐選手(3年)が「絶対に負けられない」と鋭い出足で一気に押し出し、大将の高木幹太選手(3年)は電車道で寄り切った。

 予選2回戦は県工との県勢対決を全勝で圧倒。3年ぶりの決勝トーナメント進出を手にした。主将の高木選手は喜ぶ一方で、「地元がひどい状況の中で、相撲をしていいのかと葛藤もあった」と吐露した。

 「もう食べるのに精いっぱい。相撲はできないと思っていた」。船橋選手の母の志乃歩さん(48)は、3人の奮闘に目を潤ませた。正院町の自宅は全壊し、家族5人で避難所に身を寄せた。一時、船橋選手の体重は6キロ減ったという。

 3人が稽古を再開できたのは4月に入ってから。練習拠点の珠洲市緑丘中の土俵は地震で損傷し、半分しか使えなかった。指導者の1人は「決勝は稽古不足が如実に表れた」と悔しさをにじませた。

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