【熱中症対策】避暑施設有効活用して(5月20日)

 熱中症の危険が高まる夏場に備えて県は公共、商業施設を避暑施設として開放する取り組みを進めている。昨年度は331施設を登録した。今年度は市町村や民間事業者と連携し、500施設超に拡充する方針だ。猛暑から県民の命を守る「避難所」として、さまざまな方策を講じながら周知に努めるよう求めたい。

 県は昨夏、エアコンなどを備えた県有施設と県の取り組みに賛同した11市町村の公民館、図書館など公共施設219カ所、スーパーや飲食店などの商業施設112カ所を避暑施設「ふくしまクールシェアスポット」に登録した。夏季の電力需要が高まる時間帯を中心に、過度な冷房の使用と熱中症予防の観点から、県民を受け入れてきた。環境省は、県のこうした熱中症対策を福島モデルとして全国に紹介している。

 環境省と気象庁が熱中症リスクの高まる日の前日に発表する「熱中症アラート」の発令は昨年、19回に達した。記録が残る中で過去最多の1840人が熱中症の疑いで搬送され、37人が重症となり、4人が亡くなった。

 気象庁によると、海面水温の低下に伴うラニーニャ現象の発生により、今夏も厳しい暑さが予想される。新型コロナ禍を経て人流が回復傾向にあるのも踏まえ、県は避暑施設を「ふくしま涼み処[どころ]」の名称に変更し、大幅に登録を増やす。昨夏、県内の観測史上最高の40.0度を記録した伊達市は12カ所を登録する。福島市は市内全域の学習センターなど40施設を6月から新たに開放する。

 今後は、涼み処をいかに住民に知ってもらうかが課題となる。施設の場所を記した地図を作成したり、施設前にのぼり旗を立てたりするなど、県民の認知度を高める工夫が必要となる。

 気候変動基本法の改正により、熱中症特別警戒アラートが警戒アラートの一段上に新設され、指定暑熱避難施設「クーリングシェルター」の設置が市町村の努力義務となった。「ふくしま涼み処」の取り組みは市町村のシェルター指定の参考にもなる。気象庁はアラートの改正内容を国民に丁寧に広報してほしい。住民は、自らの行動範囲のどこに暑さをしのげる場所があるのか、事前に把握する備えも大切になる。(渡部純)

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