「想いが欠けている選手はいない」「気持ちだけ前に出ても勝てない」重くのしかかる2連敗...川崎は苦境にどう立ち向かうのか

[J1第15節]G大阪 3-1 川崎/5月19日/パナソニック スタジアム 吹田

重いアウェーでの連敗となった。

前節の14節に敵地で2-5と完敗を喫していた川崎は、悔しさをぶつけるかのように、大阪での前半は、相手を敵陣に押し込みCFのバフェティンビ・ゴミスのキープ力を活かして波状攻撃を仕掛けた。

26分に右SBの瀬川祐輔が挙げたゴールはまさに、川崎らしさが凝縮されていた。これでもかとボールをつなぎ、相手エリア内左で家長昭博が挙げた優しいクロスを飛び込んだ瀬川が頭で決めた形は、G大阪の宇佐美貴史からも称賛されたほどだ。

「家長くんの落ち着き、あのひらめき、間合い、ワンステップであれだけ質の高い(ボールで)、しっかり入って来られる。フロンターレの強さ、魅力が詰まったゴールだったと思います。(G大阪は)ペナの中にほとんど全員帰っていたなかで、やられているので、相手を褒めるしかない」

もっとも例年通りオフに主力が抜け、経験値を積み上げ切れていないチームは、またも拙い試合運びを見せてしまう。

先制直後の28分にはセットプレーから失点を喫し、後半は前線からのプレッシングやボールを回す際のポジショニングを微修正した相手に対応し切れずに70分にまたセットプレーから被弾。そして焦りが生まれた81分にはもはやデジャブに映る中盤のパス回しのミスから試合を決められる3点目を奪われて力尽きた。

今季は混戦で首位との差が想像以上に離れていなかったことをポジティブに捉えてきたが、この連敗で首位の町田との差は「16」。目指し続ける覇権奪回へかなり苦しい状況になっている。

しかも4月末から5月にかけて行なわれる連戦を巻き返しのチャンスと捉え、鬼木達監督は強くチームに働きかけてきていた。川崎を何度も上昇気流に残せてきたその勝負師の勘は、9節からの5戦負けなし(2勝3分)で表現されたように映ったが、ここにきての連敗だ。シーズン当初の連敗とは意味が異なる。

「ひとつでも上を狙っていくのであれば連敗はしていけないですし、そういう話をして選手を送り出しています。ただ、現実としてそこ(連敗)は受け止めなければいけないと思います。自分たちの力を信じていますが、アウェーの難しいなかで信じ切れたのかどうか。前節もそうですが、自分たち次第で変えられるゲームだったと思うので、その気持ちの強さが必要になると思います。

もちろん順位的なところで強気になれないところもあるかもしれませんが、どのチームでも必ず順位というのはついてくるものなので、そこを一喜一憂せずにやれるかどうかというところ。本当にこの状況を脱してやろうという強い気持ちが自分自身も含めて必要です。そういう働きかけは今後もしていきたいと思います」

指揮官にG大阪戦後に想いを訊けば、こう返ってくる。

【動画】川崎の“らしい”先制ゴール
「勝ちたい」との想いをチーム誰もが持っていると強調するのはキャプテンの脇坂泰斗だ。「今後何が必要か?」と問えば、「うーん...」としばし間をあけながら、口を開いた。

「全員が勝ちたいと思っているし、誰ひとりその想いが欠けている選手は、今日のメンバーも、今日来ていないメンバーもそんな選手はいない。それを一人ひとりが思っているものをひとつにしていくのは、練習だったり、そういうところで合わせていくだとか、一人ひとりが自分が勝たせるという想いをかけ算にしていくことでチームは強くなっていくと思います。

それはただがむしゃらに走るのもそうですけど、球際だったり、ハードワークだったりっていうのは前提で欠かしてはいけないところですが、そこでどう勝つのかというところ。どう戦うかというところは、今日なんかは、前半に示せた部分はありますし、それをもっともっと突き詰めてと言いますか、それだけじゃ勝てないと今日感じましたし、得点のところで相手を苦しめていく作業が必要。相手を押し込んでいるだけじゃ相手に巻き返されてしまう。点差があってこその押し込みだと思うので、そこはやっていきたいです」

また試合後に誰よりも悔しさを表わしていた、今季オランダから加入したファンウェルメスケルケン際はその理由を「個人として出た試合は1年間負けていなかったので、それが(前節の鳥栖戦で)途切れて2連敗したこと、まずチームとして2連敗すること自体避けなくてはいけなかったですが、それを起こしてしまった。町田の昌子(源)さんは、負けに対するアレルギーという言い方を使っていましたが、そういった負けることに対して自分はもちろん好きじゃないので、そういった部分が出てしまったのかなと思います」と説明。

そして「勝つための逆算をしていくことが大事」としたうえで、こう続けた。

「負けたくない、イコール、勝つためにどうするか。頭でっかちと言いますか、表現が難しいのですが、気持ちだけ前に出ても勝てないので、熱い気持ちのなかでどれだけクールに相手の嫌なことをできるか。そしてそのなかで自分たちの良さを出していけるかが重要だと思います。

なんと言えば良いか...引き締め方がすごく大事だなと思っていて、それが一週間の組み立てにも関わってきます。どれだけ自分たちが相手の情報を仕入れてやって、それに対してクールにかつエナジーをためて試合に臨めるか」

一方で家長昭博は「チームとしてというよりも、90分間のなかで人それぞれの波もある。試合運びも含めて単純に力不足。甘さ、隙という言葉ではなくて、実力がないということだと思う」と古巣・G大阪との一戦を振り返る。

まずは勝つための想いをどう表現し、相手を見ながら実行していくのか。脇坂の言葉通り、誰もが必死に戦っているのは理解できる。しかし、若い選手も多く発展途上のチームでもある。勝利へのしたたかさは、大きく欠けていると言えるのだろう。

後方からの丁寧なビルドアップをベースに、魅せて勝つスタイルの追求はクラブの信条だ。しかし、そのプランしか持たなければ格好の標的となってしまう。

鬼木監督の下、ブレることはない。ただ、この2連敗を本当の意味で学びにしなければ、他のチームからさらに離される悲しき現実を味わうことになってしまう。

自分たちのスタイルを貫く一方で、かつての川崎のように相手を見て柔軟に勝利の糸口を探し出せるか。難易度は高いが、各選手が少しずつ意識し、声を掛けあい、想いを熱く体現し、レベルアップしていくしかないように映る。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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