【介護初心者のお悩みQ&A】親の介護にはどのくらいのお金がかかる?

突然やってくる親の介護。初めてとなればわからないことだらけ。お金はどのくらい必要になるの? どこに何を申請して、どんな介護サービスを受けたらいいの?……そんな不安だらけの介護初心者のために、介護にまつわるお金について専門家に伺いました。

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<お話を伺ったのは>
CFP®1級ファイナンシャルプランニング技能士
黒田尚子さん

くろだ・なおこ●富山県出身。1998年ファイナンシャルプランナーとして独立。CNJ認定乳がん体験者コーディネーター、消費生活専門相談員などの資格ももつ。自身も富山の母をきょうだい3人で見守る。著書に『親の介護は9割逃げよ』(小学館)。10月19日に『マンガでわかる お金に人生を振り回されたくないから超ビギナーが今すぐやること教えてください』(主婦の友社)を発売予定。

Q 親の介護費用はどう賄ったらいいですか?

「介護にどのくらいのお金がかかるのか、介護初心者にとっては雲をつかむような話だと思います。下にその平均額がありますが、あくまで目安だと考えてください。自宅を改修すれば多額の一時金がかかりますが、介護保険を使って手すりをレンタルするだけなら月々数百円程度ですむこともあります。月々の費用は在宅で介護するか施設に入居するかで変わりますが、一般的には施設介護のほうが高額です。住居費や食費、水道光熱費なども含まれるからです。在宅介護の場合は、介護度が高いほどお金がかかる傾向があります。利用する介護サービスが増えますし、紙おむつなどの衛生用品も必要になるからです」

また、同じ介護度でも認知症だと負担が1.4倍になるというデータもある。「月に何度も迷子になり、タクシーで捜し回る」「体が元気なので介護度が低く、使えるサービスが少ない。自腹で介護サービスを利用している」など思わぬ出費があるようだ。

「いずれにせよ、介護にかかる費用は親の年金や貯蓄で賄うのが大前提。できるだけ親が元気なうちに年金の額、貯蓄額、その引き出し方などを確認したいものです。聞きにくいとは思いますが、いざとなったときに困るのは親ではなく子ども。きちんと確認し、今後の見通しを立てていきましょう」

Point 介護費用の考え方

①親の資産で賄う
②「いくらかかるか」ではなく「いくらまでかけられるか」

※それぞれ「かかった費用はない」「支払った費用はない」を0円として平均を算出。
※支払った費用がない人を0円として平均を算出。
※要支援1~要介護5については、公的介護保険の利用経験がある人の平均額。支払った費用がない人を0円として平均を算出。 ※生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」より

Q 実際、介護費用はどう見積もったらいいですか?

介護費用を考えるうえで重要なのは、「いくらかかるか」ではなく、「いくらまでかけられるか」。介護は、親の年金と貯蓄の範囲の中でやり繰りしていくのが原則だ。

「まずは下の計算式でざっくりと介護にかけられる費用を見積もっていきましょう。ここで大事なのは平均余命。インターネットなどで検索すると、年齢ごとの平均余命がわかるのでそれを使って計算します。上の事例の80歳女性の場合、平均余命は約12年。それで計算すると1カ月約24万円使えることがわかります。ここから現在かかっている生活費や社会保険料などを引けば、介護にかけられる金額が見えてきます」

施設への入居を考えている場合も、月額いくらの施設に入居できるかの予測が立つ。もし、「入居一時金1000万円」という有料老人ホームへの入居を考えているなら、下の式の「手持ちの金融資産」から一時金の1000万円を引いて計算し直すといい。

「親の介護に直接かかるお金以外にも、サポートする子どもの交通費、実家での食事作りや日用品などの買い物にこまごましたお金がかかるものです。『親には請求しにくいので自分で払っている』という人は少なくないのですが、その場合、いくらかかったかは記録を残しておき、きょうだい間で共有しておきましょう。将来的に相続が発生したとき、その分の返金を求めてもいいのではないかと私は思います」

※1冠婚葬祭や家電の買い替えなど、臨時の出費。
※270歳時点の平均余命は男性15.56年、女性19.89年。75歳時点の平均余命は男性12.04年、女性15.67年。80歳時点の平均余命は男性8.89年、女性11.74年。 ※出所:厚生労働省「令和4(2022)年簡易生命表」 ※出所:黒田尚子FPオフィス

経験者からひとこと「遠距離介護の交通費が大変です!」

90歳の母は北海道在住。一人暮らしが難しくなり、地元の有料老人ホームに入居しました。私が住む東京に比べると入居金は半額で「地方は安くていい」と思ったのですが、月1回の通院のたびに飛行機で帰省し、現地での移動も基本はタクシー。合計するとさほど安くないうえ、私の体力も尽きそう。東京の施設に移すことも検討中です。

取材・文/神 素子

※この記事は「ゆうゆう」2023年11月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

※2023年10月20日に配信した記事を再編集しています。


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