中国が台湾に軍事侵攻した場合、TSMCの半導体製造装置はリモート操作で無効化か

Image:William Potter/Shutterstock.com

中国による台湾侵攻への警戒が高まるなか、Appleシリコン(独自開発チップ)の製造を一手に引き受けるTSMCとチップ製造装置メーカーのASMLホールディングが、有事の際にはリモート操作でチップ製造機を使用不能にできるとの噂が報じられている。

台湾と中国との緊張は高まり続けており、すぐに収束する気配はない。中国は台湾を自国の領土だと主張し、台湾政府は軍事的に抵抗する可能性を否定していないため、武力侵攻の恐れがある形だ。

米政府関係者らは、中国が2027年までに台湾侵攻を成功させるための準備を進めていると指摘。昨年初めにCIA長官が述べたほか、米軍の幹部も中国が(中国人民解放軍の100周年にあたる)同年までに「世界クラスの軍隊」の構築を目指していると述べていた

最新のBloomberg報道によると、米政府高官はオランダと台湾の関係者に、中国の攻撃がエスカレートしたらどうなるかと懸念を伝えたという。TSMCが拠点とする台湾は、世界の先端半導体の大部分を生産する場所だ。またASMLはオランダの企業であり、今や半導体の製造に欠かせない深紫外線(DUV)露光装置を供給している。

オランダ政府がASMLと会談した際、同社はリモート操作で製造装置を無効化できると伝えて安心させたと、二人の匿名関係者が語っているという。オランダはより精密にリスクを評価するため、侵攻の可能性につきシミュレーションを行ったとも付け加えている。

世界で唯一ASMLが製造するEUV装置はバス程の大きさで、1台当たり2億1,700万ドル以上で販売されている。定期的なメンテナンスとアップデートが必要なため、その一環として遠隔操作で無効化できるキルスイッチが搭載されているとのことだ。

米政府は中国がこのマシンを持ち出し、先端チップの製造に使うことを懸念し、警戒を強めてきた。その意向を受け、オランダはASMLに最先端のEUV装置を中国企業に輸出することを禁じている。それでも同社にとって中国は大きな市場であり、完全に販売を止めることは容易ではないと見られている。

たとえ商取引が行われなくとも、入手する手段は他にある。その1つが、軍事侵攻して装置を強奪することだ。中国の手にTSMCの半導体製造装置が渡るぐらいなら、米軍が爆撃して破壊するシナリオが検討されているとの報道もあった

TSMCが米アリゾナ州に半導体製造工場を建設し、米政府が巨額の補助金を出しているのも、そうしたリスクに備えている一面がある。が、施設の建設コストや米国での人件費の高さが、いずれチップ価格のさらなる上昇に繋がるのかもしれない。

© 株式会社 音元出版