原産国で何が…コーヒー党に悲報 円安だけじゃない…着々と進む転作も一因 相次ぐ高騰、街の喫茶店に募る苦悩

 手軽に楽しめる嗜好(しこう)品として人気のコーヒーが、高級品になるかもしれない。原料のコーヒー豆が、産地の気候変動や転作、新型コロナウイルスなどで高騰。そこへ歴史的な円安も加わり、大手飲料メーカーやコンビニのカフェも売値を上げた。値上げするか否か。鹿児島市内のコーヒー店主からは苦悩の声が漏れる。

 昨年末オープンの名山珈琲MoxNix(モックスニックス、同市名山町)には、既に卸元から複数回にわたり1~2割値上げの相談がある。おいしいコーヒーを楽しんでほしいと構えた店。店主の今村仁さん(59)は「開店したばかり。いきなり値上げするわけにはいかない」と嘆く。

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 コーヒー豆は主に、喫茶店などで使われるアラビカ種と、缶コーヒーといった工業用製品のロブスタ種に分けられる。開業25年の長島珈琲焙煎(ばいせん)店(同市鷹師1丁目)店主の長島道和さん(67)は「近年の高騰はロブスタ種の値上がりに端を発している」と指摘する。

 アジアで多く産出されるロブスタ種だが、エルニーニョ現象による不作に加え、一大産地ベトナムではドリアンへの転作が進む。ロブスタ種の高騰で、高品質とされるアラビカ種との価格差が縮まり、競い合うかのように値がつり上がる。

 3年前は世界一の生産国ブラジルで霜害があり、コロナなどによる海上輸送費高騰で一気に3割ほど値上がり。円安も拍車をかけ、長島さんは「こんなことは初めてだ」と肩を落とす。

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 新たな販売手段を模索する動きもある。「2年前に売値を10%弱上げた」と話すのは、DINIZ COFFEE(ジニスコーヒー、同市城山町)のマネジャー・ジニス葉子さん(47)。スイーツと一緒に楽しんでほしいと、今年は逆にコーヒー一杯の値段を下げて、セット販売による利益アップを目指す。

 同市下荒田3丁目の珈琲豆専門店mikoya134(ミコヤイチサンヨン)も事情は同じ。例えばインドネシア産のタイガーマウンテンは100グラム700円から900円にした。

 店主の馬場克也さん(60)は「店頭では100グラム1000円の大台を超えると売れない」。そこで現在は店頭価格を据え置き、ネット販売に注力。すると店頭より売れ行きは好調で手応えを感じる。今後、円安を逆手に海外販売も拡大していく方針だ。

世界各国のコーヒー豆が並ぶmikoya134=鹿児島市下荒田3丁目
コーヒーを入れる長島珈琲焙煎店の長島道和さん=鹿児島市鷹師1丁目

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