奥村さん、楽天で奮闘 コーチ就任、12球団最年少「1軍の戦力育てる」

楽天の2軍内野守備走塁コーチとして指導者人生を歩み出した奥村展征さん(右、日大山形高出)=仙台市泉区・森林どりスタジアム泉

 夏の甲子園で2013年に県勢初の4強入りを果たした日大山形高の主将で、プロ野球・ヤクルトでは2度のリーグ優勝に貢献した奥村展征(のぶゆき)さん(28)が今季、楽天の2軍内野守備走塁コーチに就き1軍選手を輩出しようと奮闘している。20代のコーチ登用は異例の抜てきで、12球団で最年少。自らが大きく成長した東北に戻り、指導者として新たな挑戦に心血を注いでいる。

 22日、仙台市泉区の森林どりスタジアム泉。「オーケー、ナイスプレー」。選手約30人が汗を流す中に、前向きな声がけで雰囲気を盛り上げる奥村さんの姿があった。試合形式のノック練習でミスが相次ぐと、奥村さん自らマウンドに選手たちを集める。守備のサインプレーの再確認を厳しく求めた。

 昨年11月にヤクルトから戦力外通告を受け、現役続行を模索する中で、楽天からコーチの打診を受けた。「自分を見てくれていたことがうれしかった。10年間頑張ってきて良かったと思えた」。そして「受けよう」と即決。日大山形高時代の仲間からも「良かったな」と祝福を受け、再びユニホームを着て東北の地を踏んだ。

 育成選手で支配下登録を目指す大河原翔外野手(20)=東海大山形高出、千葉県出身=が「年が近く、選手に寄り添った指導をしてくれるのでやりやすい」と話すように、若手と近い距離感は奥村さんの強みの一つだ。ただ、本人は「選手の技術面だけでなく生活面にも気を配る必要がある。とても難しい仕事」と苦笑いする。「自分が何をしたらチームに貢献できるか」を日々考え、やるべきことを模索する。

 憧れる指導者像として母校の荒木準也監督(52)を挙げる。バッティングの手本を自ら披露し、打撃投手を買って出るなど背中で語った恩師。高校3年間の練習に食らい付けたのは「監督に付いていきたい」との一念からだった。「選手にそこまで思わせる指導者になりたい。そして一人でも多く1軍の戦力を育てる」。練習では誰よりも大きな声を出し、最後は一人でグラウンドを丹念にならした。若きコーチの第二の野球人生は始まったばかりだ。

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 6月28日に山形市のきらやかスタジアムで、プロ野球パ・リーグ公式戦「東北楽天ゴールデンイーグルス―埼玉西武ライオンズ」(山形新聞、山形放送、楽天野球団主催)が行われる。本県での熱戦まで、あと1カ月余り。奧村さんの指導を受けた楽天の2軍選手がどれだけレベルアップし、1軍にはい上がれるかにも注目が集まる。

 ▽おくむら・のぶゆき 滋賀県出身。1学年下の中野拓夢選手(阪神)らと出場した2013年の全国高校野球選手権大会で県勢初の4強に進出した日大山形の主力として活躍した。巧打堅守の内野手で、同年のドラフト4位で巨人に入団。15年にフリーエージェントの人的補償でヤクルトに移籍し、21、22年のリーグ連覇に貢献した。23年11月に現役を引退し、楽天の2軍内野守備走塁コーチに就任した。

支配下登録を目指して練習に励む大河原翔外野手(東海大山形高出)

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