重い病気の子支える「ふくいこどもホスピス」がNPO法人化 施設開設を目指し11月にシンポジウム

NPO法人に移行し、今後の取り組みを話し合う「ふくいこどもホスピス」のメンバー=福井県福井市の福井新聞社

 病気の子どもたちを支援し、家族と過ごせる施設の開設を目指す団体「ふくいこどもホスピス」がこのほど、NPO法人化した。11月には、福井県外で施設を運営している団体や小児科医らを招いたシンポジウムを開催する。代表の石田千尋さん(41)=福井県鯖江市=は「多くの人に子どもホスピスを知ってもらい、協力を得ながら、地域に開かれた“第2のおうち”をつくっていきたい」と話している。

 石田さんは2019年、夫の赴任先のドイツで、当時1歳だった長男を小児がんで亡くした。余命宣告を受けた後、現地の子どもホスピスで家庭のような安らぎの時間を過ごした。「こうした場所が福井にもあれば」。帰国後の21年3月に団体を立ち上げた。

 病気の子どもと親向けに、ワークショップやお話会などを企画する「家族会」を年に5回ほど開催。子どもを亡くした母親が悩みや不安を打ち明け合う「夕虹の会」は毎月開いてきた。

 闘病中の子どもたちが描いた絵をジグソーパズルにしてプレゼントしたり、入院中の子どもに付き添っている家族に弁当を配布したりといった取り組みも行っている。

 こうした活動が認められ今年4月9日、福井県にNPO法人として認証された。団体は石田さんをはじめ、子どもを亡くした親5人と、看護師など医療関係者らで運営。従来の活動やシンポジウムなどを通して、子どもホスピスの理念や現状を県民に知ってもらう。

 施設建設のため、今後は県外の子どもホスピスの視察も実施。2年後には、寄付者に税制優遇が適用される認定NPO法人を目指す。県外では自治体から土地を無償貸与されている例もあり、石田さんは「行政にも理解してもらえるよう、勉強会を開催するなどしていきたい」と話している。

 県によると、県内の小児がん患者(0~20歳)は23年3月末現在で83人。石田さんは「重い病気の子どもたちが『きょうも楽しかったね』と言える第2のおうちをつくりたい」。県民の理解、看護師などの人材確保、建設資金や数年分の運営資金の調達、土地の確保などクリアすべき課題は多いが「5~10年で形になれば」と話している。

 施設の名誉館長は、勇気を持って病気と闘い、旅立っていった子どもたちが就任する予定。

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