「自分にとっての代表作」大原優乃が語る『おいしい給食 Road to イカメシ』

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“給食マニア”の教師とライバルの生徒の給食バトルを描き、熱烈なファンを獲得してきた『おいしい給食』シリーズ。待望の映画3作目となる劇場版『おいしい給食 Road to イカメシ』が5月24日に公開を迎える。

ヒロインの新米教師・比留川愛を演じるのは大原優乃。グラビアアイドルとして絶大な人気を誇り、近年は女優としても多彩な作品に出演、高い評価を受ける大原が「自分にとっての代表作」と語る本作への熱い思いを語ってくれた。

『おいしい給食 Road to イカメシ』予告編

“聖子ちゃんカット”はいい意味でのスイッチに

――大原さんは、函館に舞台を移して、昨年10月より放送された「シーズン3」より『おいしい給食』シリーズに参加されていますが、熱烈なファンを抱える人気作品に途中から入っていくという経験はいかがでしたか?

大原 これまでのシリーズに携わられてきたキャストやスタッフ、そしてファンのみなさんに負けないくらいの愛をもって、この作品に入らせていただこうという思いで参加しました。

以前から作品は拝見していましたが、出演が決まってもう一度観させていただいて、給食を通して様々なドラマが描かれた作品であり、一見、給食のことだけを描いているようで、実は社会のことや教育について、刺さる言葉がたくさんあり、世代を問わず多くの方に愛される作品なんだとあらためて感じました。

――比留川という役柄については、どんなキャラクターにしたいと考え、実際にどのように作り上げていったのでしょうか?

大原 これまでのシリーズのヒロインは、甘利田先生(市原隼人)がボケだとしたら、ツッコミという印象だったんですけど、脚本を読ませていただくと、私が演じた愛先生もボケなんですよね(笑)。“ボケ×ボケ”という組み合わせでも面白いんじゃないかと自分なりに考えて作品に入りました。

新米教師で、自分に自信を持てない、頼りないキャラクターだったので、教師らしくない教師にしようと思ったんです。

これまで自分が学園モノの作品で生徒役をたくさんやらせていただいてきて、先輩方が演じる教師をたくさん見てきたので、「私に教師役が務まるのかな……?」という不安はいっぱいありましたが、愛先生は教師らしくない教師だと思っていたので、あまり気負い過ぎずにやらせていただきました。ただ、生徒に愛される教師なので、普段は人見知りなんですけど(苦笑)、撮影の空き時間に生徒のみんなとお話をするようにして、コミュニケーションをとるようにしたり。

あとは、帰国子女で怒鳴ると英語が出てくるという設定なので、自分で英会話の先生を探して、マンツーマンで発音の練習をしました。

昭和の時代設定ということで、容姿に関しても細かく作っていただいていて、象徴的なのが“聖子ちゃんカット”なんですけど、元々の私の髪だとああいう髪形にはならないので、レイヤーをたくさん入れて時代を演出していただきました。あの役の姿になると、身も心も引き締まって、毎朝いい意味でのスイッチになっていましたね。

(C)2024「おいしい給食」製作委員会

――これまで大原さんに対して“昭和”というイメージはほとんどなかったので、ファンの方にとっても、驚きの“変身”だったのではないでしょうか?

大原 そうであれば嬉しいですね。実際、ドラマが放送されて、多くの反響をいただきましたし、ファンや一般の視聴者のみなさまだけでなく、業界の方からも、他の現場で「『おいしい給食』見ました」という声をたくさんいただいた1年で、本当に幅広い人たちに愛されている作品なんだなと再認識しました。

「市原さんとご一緒した時間は私にとって財産です」

――ドラマ版と今回の劇場版で、比留川に成長や変化は見られるのでしょうか?

大原 甘利田先生が人に顔を近づける動きは、このシリーズの中でも、象徴的なものだと思いますが、ドラマの最初の頃は、そんな甘利田先生にひるんで下がっていた愛先生ですけど、その距離感がシーズンと劇場版を通じて変わってきているので、そこはぜひ見ていただきたいです。

――コメディ作品に参加されて、面白さや難しさを感じる部分はありましたか?

大原 市原さんがとにかく毎シーン、脚本を超える芝居をぶつけてくださるので、投げかけてくださる芝居をひとつたりともこぼさずに返さなきゃと集中してお芝居をしていました。

――市原さんの予測不能な動きやリアクションにかなり鍛えられたのでは?

大原 そうですね(笑)。最初に愛先生という役をつかむまで、特に意識したのはテンポでした。過去のシーズンにない、甘利田先生とヒロインとの掛け合いを見せられたらと思ったので、まくし立てるように話してくる甘利田先生をゆるくかわす――ポワンとすり抜けるような感じで演じています。

(C)2024「おいしい給食」製作委員会

――あらためて、市原さんとの共演はいかがでしたか?

大原 カチンコが鳴る直前まで、そのシーンの芝居についてずっと考えている方で、役に対しても作品に対しても常にまっすぐに向き合ってらっしゃって、その姿にたくさんの刺激をいただきました。本当に贅沢なことに、ヒロインという立ち位置で一番そばでお芝居を見させていただいて、市原さんとご一緒した時間は私にとって財産です。

いつも自分に対しては厳しく、ストイックなんですけど、周りには本当に愛情深くて優しい方で、一緒のシーンのお芝居について相談させていただいたときも「優乃ちゃんのやりたいようにやっていいよ」と言ってくださったので、私のことを信じてくださる優しさに甘えて、思いきり飛び込ませていただきました。

――今回の劇場版で、特に印象的なシーンやセリフはありますか?

大原 普段は同世代の俳優さんとお芝居することが多いので、初めて脚本を読んで、六平(直政)さんと対峙するシーンを読んで震えました(笑)。脚本で読んだときから緊張しちゃって、「これは全てをぶつけないといけないな」と覚悟しました。

甘利田先生とのシーンに関しては、ドラマ以上に色恋の部分も描かれているんですけど、王道とまた違った意味で体を張ったラブシーンになっています(笑)!

――六平さんに限らず、大先輩のベテラン俳優さんたちとの共演シーン、特に比留川は彼らと対峙するシーンが多いですよね?

大原 毎回、いろんな刺客がやってくる感覚でした(笑)。

――大原さん自身の学生時代の給食の思い出や、忘れられない先生との出会いなどがあれば教えてください。

大原 給食に関して言うと、愛先生がドラマから劇場版を通じて、ずっと気にかけてきた生徒のマルコくん(田口ハンター)が「給食は戦いです」というセリフを口にしますけど、私にとっても、小学生の頃はまさにそんな気持ちでした。食べるのが遅くて、給食の時間が終わっても、ひとりで教室に残って食べていて、まさに“戦い”でしたね。

先生との出会いで言うと、10歳の頃からお仕事させていただいているので、テストのためだけに帰ったり、なかなか学校に通えない時期もあって、それぞれの先生にはすごくお世話になったんですけど、特に高3のときの担任の先生とはいまだに連絡を取っているんです。

大きな決断をする際に大事にしているのは直感!

――今回、比留川は悩んだ末に人生の決断を下します。大原さん自身は、大きな決断をする際にどんなことを大事にしていますか?

大原 直感ですね。わりと優柔不断な部分もあるんですけど、大きな決断をするときは、直感を信じてスパッと判断することが多いです。それでも悩むことはありますけど、そういうときは日々支えてくださっている近くの人に相談して、自分の考えを整理させてもらっています。

――いま、女優という仕事の楽しさをどういうところに感じていますか?

大原 お芝居を始めた頃は、私の世間でのイメージに近しい役をいただくことが多かったんですけど、この1年くらいでオファーをいただくキャラクターの幅がグッと広がってきたのを感じています。そういう現場を経験するとすごく刺激的で、悩みは常に尽きないんですけど(苦笑)、毎回現場で悩み続けて、それが苦しくもありつつ楽しいので幸せだなと思います。

――年齢的にも社会人の役が増えてくるなど、変化の時期だと思いますが、これからやってみたい役、目指す女優像などがあれば教えてください。

大原 自分に近しい役はやり切った感があるので、自分とかけ離れていればいるほど面白いですね。役を自分に寄せるのではなく、役に歩み寄れる役者になりたいと思っています。

やってみたい仕事は、ひとつは声のお仕事をもっとやらせていただきたくて、勉強中です。あとは、個人的に暗い映画が好きなので、そういう作品で、何か重いものを背負っている役を演じてみたいですね。

――忙しい日々の中でオンとオフの切り替えのために大事にしていることやプライベートでハマっていることはありますか?

大原 お休みの時間も、何かと仕事のためにケアをしなくてはいけない時間がほとんどで、いま、まさに仕事のために節制中なので、ジムに行ったり、メンテナンスを日々やっていますが、その合間に自分の車で好きな音楽をかけながらドライブするのが楽しいですね。

取材・文:黒豆直樹
撮影:川野結李歌
メイク:イワタ ユイナ/YUINA IWATA
スタイリスト:德永貴士(SOT)/Takashi Tokunaga(SOT)

『おいしい給食 Road to イカメシ』
5月24日(金)公開
(C)2024「おいしい給食」製作委員会

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