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クリス・メイソン政治編集長、BBCニュース
イギリスの総選挙がやってくる。もうすぐ民意が問われることになる。
政治権力は近く、議会議事堂のあるロンドン・ウェストミンスターから、そして現在それを握っている者たちの手から、失われる。
政治家たち、政治家たちの未来、そしてそれよりはるかに重要な国の方向性が、国民の手に委ねられることになる。
リシ・スーナク首相は大雨の中、ロンドン・ダウニング街10番地にある首相官邸の前に立ち、総選挙を7月4日に実施すると発表した。すぐ近くからは音楽が鳴り響いていた。
その曲は音楽グループ「D:Ream」の1990年代のヒット曲「Things Can Only Get Better」(「物事はよくなる一方だ」の意)だった。トニー・ブレア政権時代のこの曲を覚えている人もいるかもしれない。
この数週間、総選挙は秋に実施され、少なくともあと2年はスーナク政権が続き、経済見通しが改善するとの期待感が高まっていた。
つい数日前、ある政府高官と私は夏の選挙について話をしていた。この高官は私にこう言った。「興奮するような理由はない」と。
私は昨日(21日)も別の保守党幹部と1時間以上にわたり話をしたが、そこでは、かぼちゃが出回り電飾が輝く時期には、まだ長い選挙キャンペーンが続いているかもしれないということになった。
しかし、誰もがこのようなことについて状況を把握しているわけではない。
決定というのは極めて不安定なものだ。オリヴァー・ダウデン副首相らは、より早期に総選挙を実施するようスーナク首相をせき立てていた。
彼らが早期実施を訴えていたのには理由がある。物事はあまり改善しないかもしれないし、有権者が早く投票機会を得たいと考えていると思われる中で選挙を先延ばしすれば、保守党が敗北するリスクをさらに大きくするかもしれないと、彼らは感じていた。
インフレ率の低下
言い換えれば、いま総選挙をやらなければ、状況が悪化しかねない、ということだ。
スーナク首相も、少なくともいくつかの目標が達成された、あるいは達成されそうだと、いまなら示すことができる。
現在のインフレ率は成功の部類に入る。
もちろん、政府の対応によるものとは純粋には言えないが。
インフレ率が高騰すれば政府は非難される。それを考慮すれば、インフレ率が下がったときに政府がいくらか自分たちの得点にしようとするのは当然だ。そしてインフレ率は実際に下がった。
経済全体の見通しも少しは明るくなっているようだ。
そのほか、小型ボートなどで英仏海峡を渡ってイギリスに不法入国した亡命希望者らをアフリカ・ルワンダに移送する計画もある。
亡命希望者の移送はまだ実現していないが、おそらく選挙運動の期間中にも航空機での移送が行われる可能性はある。ただ、この計画が不法入国の抑止力として機能するという主張が正しいか、投票日前までに判明することはなさそうだ。
さていよいよ、選挙戦が始まる。
保守党は何度も繰り返し訴えるだろう。自分が何を望むのか、慎重になれと。労働党などの野党は、今こそ変化の時だと、何度も繰り返し訴えるだろう。
何が起きるにせよ、総選挙の結果はかなり重要なものになるだろう。
政権与党が入れ替わり、世論調査がおおむね正しかったことが証明されるのか。それとも、世論調査が外れて、近年最大の番狂わせが起こるのだろうか。
(英語記事 Chris Mason: Why did Sunak decide to call summer election?)