外国人若年層に多い結核…20代は77%、30代も54%

県内の保健活動や感染症などについて発表した県公衆衛生学会=鹿児島市の県医師会館

 外国人労働者の増加に伴い、結核の新登録者に占める外国人若年層の割合が増えている。技能実習生を多く受け入れる鹿児島県も同様の傾向が見られ、16日に鹿児島市で開かれた県公衆衛生学会では外国人の結核をテーマにした発表が相次いだ。保健師らが、受け入れ事業者に対する啓発や自治体などと連携した取り組みの必要性を訴えた。

 国の統計によると、2022年の新登録結核患者は約1万人で、「低まん延国」の水準を維持する。外国生まれの人の割合は11.9%。中でも20代では登録の77.5%、30代は54.3%を占める。

 学会は県公衆衛生協会が主催。生活習慣病対策や食品衛生など18の調査研究のうち、三つが大隅や南薩、北薩地域の外国人の結核についてだった。

 鹿屋、志布志両保健所の管内では23年速報値で新たな結核登録者38人中、外国人が18.4%。割合は年々右肩上がりで推移する。

 両保健所は今年1~2月、実習生が罹患(りかん)した管内の13事業者を対象に調査。回答した12事業者のうち、67%が結核の知識が「ほとんどなかった」とした。

 保健所は医療機関から感染者報告を受けるが、実習生の監理団体は全て地区外で、当初は事業者を把握していなかった。調査を踏まえ、各市町と連携して事業者向けの結核予防研修会を開いた。

 報告した鹿屋保健所の保健師、片野坂有香さんは「事業者による日々の体調管理や支援に関する知識が早期発見、対応につながる。人権に細心の配慮をはらい、市町や関係機関との連携が必要」と訴えた。

 出水保健所は、20代の患者4人の事例から対応や支援を考察した。

 ある患者は、主治医から治療中の就労制限が指示された。収入や住居の問題が生じたが、事業者側が実習カリキュラムを変更。給料も支払われ、治療を終えることができたという。

 発表した保健師の山元美和さんは、職場の同僚ら支援者との連携や治療中の生活支援を課題に挙げ、「正しい知識の普及啓発や、差別・偏見を生まないよう本人に寄り添った対応などが求められる」と話した。

 南さつま市の加世田保健所管内では23年、外国人患者の割合が26.7%。22年の全国や県の割合よりも高い水準にあり、保健所は事業者への啓発など取り組みを検討していくとした。

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