新商品は『神父様の〇〇』『天使たちへの〇〇』 「神父」「園長」「ユーチューバー」のインド人男性と老舗和菓子店のコラボ商品誕生【徳島】

徳島県阿南市富岡町にあるカトリック教会の神父で、幼稚園の園長もつとめている南インド出身の男性がいます。

この男性が地元の老舗和菓子店と協力し、故郷の味を生かして、新たな商品を生み出しました。

開発から販売まで、カメラが密着しました。

3つの顔を持つ南インド出身のスティーブ神父

阿南カトリック教会のスティーブ神父(39歳)。

南インド出身で、日本へ来て10年あまりになります。

スティーブ神父は、教会の敷地内にあり、モンテッソーリ教育を取り入れている阿南聖母幼稚園の園長も兼ねています。

祈り、そして子どもたちの笑顔にあふれた日々を送っているスティーブ神父。

しかし、そんなスティーブ神父には、実はもう一つの意外な顔があるんです…。

(スティーブ神父 ※神父のYouTube用動画を参照)

「今回は『ウプマ』をどうやって作るかを紹介します」

もう一つの顔というのは、何とユーチューバー。

ふるさと・南インドの郷土料理を紹介し、自ら調理する動画を不定期に投稿しています。

2つの顔を持つ阿南市富岡町の老舗和菓子店「もみじや」

一方、富岡町の商店街にある和菓子店「もみじや」、地元の人たちに愛されるこの店にも、もう1つの顔があるんです。

(「もみじや」の店員)

「これ『ちくわパン』。『ちくわ』が入ってる、『ちっか』」

和菓子店ですが、パンも作っているんです。

このパンも人気で、朝からたくさんのお客さんが訪れます。

「もみじや」のパンは、スティーブ神父の阿南聖母幼稚園で週2回、給食として提供されています。

(園児)

「パン、ありがとうございました」

スティーブ神父と「もみじや」がコラボ!?

2024年3月、スティーブ神父のYouTube動画を見たもみじやの岡澤孝浩社長(54歳)が、阿南聖母幼稚園を訪れました。

パンを届けに来たのではありません、ある提案をするためです。

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「(動画を見て)カレーをカレーパンにしたら絶対面白いだろうと閃きました。カレーパンというのは、私の中では長年の宿題だったので、神父様のカレーで非常に美味しいカレーパンができるのかなと」

(スティーブ神父)

「最初はびっくりして、私のカレーでいいのかなと思ったりして自信はなかったけど、南インドの味をみんなに共有したいと思い、やってみたらどうかと考えました」

スティーブ神父からカレーのレシピを教わり「THE カレーパン」を

こうしてカレーパンのレシピづくりが始まりました。

決め手となるのはもちろん、インド料理の命「スパイス」。

(スティーブ神父)

「『マスターシード』『クミンシード』『ターメリックパウダー』...」

懸命にメモを取る岡澤さん、スティーブ神父のふるさとの味を忠実に再現しようと必死です。

(スティーブ神父)

「みじん切りにした玉ねぎをちょっと茶色になるまで。色が変わる。みじん切りにすると、早く茶色になる。(Q.みじん切りにすると、子どもが食べやすい?)そうです、タマネギの形がなくなるので、入ってるというのがわからない」

ほかの野菜などもほとんどがみじん切り、肉や野菜がゴロゴロ入った日本のカレーとはだいぶ違います。

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「(Q.みじん切りは手間がかかりますが?)極めて小さいみじん切りでいこうと思います。子どもが食べやすくするのが、一番の決め手かなと」

岡澤さん、ここでちょっと味見を。

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「あとからスパイスがきます。香辛料の辛さがグワ~っとくる感じ、美味しいです」

ジャガイモもつぶして、ほかの具材と混ぜ合わせます。

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「さあ、これをどういう風にパンの生地で味を調整するか、いま悩みつつある。『THEカレーパン』を作りたい」

味を試行錯誤する中での気づき

スティーブ神父のカレーをベースに、どうカレーパンとして仕上げるか。

試行錯誤のうち、岡澤さんはあることに気づきました。

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「インドの家庭料理ということで、お母さんが家族のことを考えて作っているカレーなんだと感じる。野菜がたくさん入っていて栄養満点だということや、ニンニクとショウガが入っていて寒いときに子どもの体を温めるとか。そして今回のカレー自体が、今まで見たことないカレー。ひょっとしたら、全国で初めての部類のカレーパンになるかもしれない。せっかく神父様に教えてもらった大切なカレー、大事にしたい」

約1か月半かけて試作品完成、試食するのは...

そして5月8日、阿南聖母幼稚園の給食の時間、岡澤さんは幼稚園を訪れました。

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「きょうは、スティーブ神父様におっちゃんが教えてもらって作ったカレーパンを、皆さんに試食してもらおうと思います」

子ども向けに、辛さを抑えたタイプのカレーパンを作りました。

(園児)

「いただきます」

さて、子どもたちの反応は?

(園児)

「おいしい」

「おいしい」

「うまい」

反応は上々のようです。

(園児)

「もっといる、もっといる、もっといる」

「もうないの?」

そして、みじん切りの効果も。

(園児)

「(Q.嫌いなトマト入ってたけど食べられた?)うん」

「トマトの味が全然しなくて美味しかった」

「私もしなかった」

(スティーブ神父)

「おかわりという声が多くてびっくりした」

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「不安に思いながら作り上げたんですけど、きょうの食べているときの子どもたちの『美味しい』という言葉がすごく嬉しかった。すごく反応が良かったし、野菜もたくさん入っているけど、苦手な野菜があったにも関わらず、食べてくれたのは非常に嬉しかった」

いよいよカレーパンがデビュー、その売れ行きは...

5月19日、阿南聖母幼稚園で開かれた「あなん聖母マルシェ」、ここに「もみじや」も出店しました。

そう、この日この場でついに完成したカレーパンが商品としてデビューします。

用意されたのは2種類のカレーパン、大人向けのスパイシーな味「神父様のカレーパン」、そして子ども向けに辛さを抑えた「天使たちへのカレーパン」です。

用意されたのはあわせて50個あまり、この日はあいにくの雨でしたがカレーパンは飛ぶように売れていきます。

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「揚げてある方が大人向けの『神父様のカレーパン』で、焼いてある方が子ども向けの『天使たちへのカレーパン』です」

何と、始まって30分もしないうちに完売しました。

(スティーブ神父)

「野菜も多いし、子どもたちにエネルギーを与えるものがいっぱい入ってるから。食べた子どもたちが美味しいとも言ってくれるし。完売して嬉しい」

(もみじや 岡澤孝浩社長)

「これより3倍は作っておかないといけなかったかなと。いまお客さんが増えてきて、売り切れで申し訳ないと思いながら反省しています。「もみじや」のお店の方でも神父様のインドのカレー味のカレーパンを、地元阿南市のお客さんにも食べてもらえたら。県内外の皆さんに、富岡商店街まで足を運んでもらえたら嬉しい」

ふるさとの味を届けたいというスティーブ神父の思い、子どもも大人も笑顔にしたいという岡澤さんの思い。

いろいろ詰まったカレーパンは、幸せの味がしました。

【今後の販売】

このカレーパン、作るのに大変時間がかかることもあり、「もみじや」では5月28日(火)から販売を始め、毎週火曜日と木曜日に「神父様のカレーパン」・「天使たちへのカレーパン」を、午前10時からそれぞれ15個ずつのみ販売する予定です。

より多くの人に手に取ってもらえるよう、購入可能数は1組につきあわせて2個までとなっています。

また、イベントに出店する際などにも、販売する予定だということです。

なお、デビュー日は記念特別価格で250円でしたが、どちらも1個300円(税込)で販売されます。

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