【経済ニュースの核心】
中国の習近平国家主席は国賓としてフランス、セルビア、ハンガリーの欧州3カ国を歴訪(5月5~10日)し、「一帯一路」などを議論した。
6日にマクロン仏大統領とも会談。習氏は、2024年に国交樹立60周年を迎えた歩みを評価し、双方は独立自主を堅持、ともに「新冷戦」や陣営対立を防ぎ、平等で秩序ある世界の多極化を推進し、デカップリングに反対すべきだとした。
マクロン氏は、フランスは中国企業に対して差別的な政策はとらず、ハイテクを含む多くの分野の投資を歓迎するとしていた。
フランスが習氏を国賓として招いた背景に7月26日から8月11日まで開催されるパリ五輪や、28日から開催のパラリンピックがあろう。五輪は「平和の祭典」であり開催期間中に戦争の悲惨を見たくない。
世界でロシアのプーチン大統領に物が言えるただ一人の指導者、習氏は、マクロン氏との会談でパリ五輪期間中の休戦を世界に呼びかけることで一致した。
マクロン氏は、習氏にウクライナ侵攻を続けるロシアへの働きかけを求めたとみられ、「五輪休戦が、国際法を尊重した永続的な解決に取り組む機会になる」とし、習氏がウクライナやガザ情勢など紛争にかかわるすべての関係国などに向けて、五輪休戦を呼びかけることに同意したことに感謝した。
ただ、昨年11月の国連総会で両大会の開催に合わせて休戦を求める「五輪休戦」決議が賛成多数で採択されている。
■ロシアとは包括的戦略パートナーシップを深化
習氏とプーチン大統領は16日、北京で会談。両国への圧力を強める米国を非難し、防衛・軍事関係をさらに深化させる「新時代」を築くことで合意し、包括的戦略パートナーシップを深化させる共同声明に署名した。ウクライナについては、プーチン氏が危機打開に向けた中国の取り組みに謝意を示し、習氏は政治的解決が「正しい方向」との認識で一致したと述べた。
世界の関心が米国大統領選挙から習氏にシフトしたような5月、「五輪休戦」を念頭にロシア、イスラエルともいま「陣取り」のような攻勢を強めているのだろう。岸田首相も有権者の反発を招きかねない五輪期間の解散総選挙は困難とし、五輪前に総選挙とのシナリオも描いていよう。
(中西文行/「ロータス投資研究所」代表)