開設1年の長崎県幼児教育センター 現場で課題に即した研修 高まる需要、裾野拡大を目指す

県幼児教育センターの研修で、不適切な保育について話し合う保育士ら=大村市、ぷれり恵光保育園

 長崎県内の幼稚園や保育所、認定こども園に幼児教育のアドバイザーを派遣し、それぞれの課題に即した研修を実施する県幼児教育センターが開設から1年を経過した。研修ニーズは高い一方、日々の業務に追われる現場でいかに研修を実施してもらうかが課題で、周知活動などに努めている。
 同センターによると、県内では2020年度以降、待機児童は発生しておらず、「量の確保から質の向上に(求められることが)変わっている」。こうした状況を受け同センターは、幼児期の教育や保育の質向上につなげようと23年4月に県庁内に開設された。保育士や幼稚園教諭、教職員の資格を持つ職員らで構成し、アドバイザーによる支援をはじめ、保育に携わる団体を対象とした研修を実施している。
 昨年度のアドバイザー派遣実績は46件。保育の様子を見て改善点をアドバイスするほか、小学校への引き継ぎ事項をまとめた指導要録の作成、発達障害の疑いがある子どもとの関わり方など園側の希望によって研修内容は異なる。
 10日は大村市東大村2丁目のぷれり恵光保育園で、不適切保育の防止をテーマに研修を実施。アドバイザーによる説明の後、参加した保育士8人がグループワークで日々の保育の中で不適切と考えられる事例を話し合った。同園の三根雅之園長は「普段、仲間同士で指摘しづらい雰囲気もある。こうした研修で振り返りを含めて話すのは良い機会になった」と話した。
 一方で、こうした研修の対象となる園は県内に約700カ所あり、センター職員だけですべて対応するのは難しい。このため今年2月からは自治体ごとにアドバイザーを育成する研修を開催。現在、県内20市町から32人が参加している。
 さらに県は本年度、園内研修を実施する園の保育士らに1人当たり2万円を支給する事業を新たに始めた。テーマを決めて各市町を回る巡回研修にも取り組み、こうした事業を通じて同センターを活用する園の裾野を広げたい考え。本年度はすでに研修実施の申し込みが30件近く寄せられているという。
 室野亜津子センター長は「アドバイザーの話を聞いたり保育者同士で話し合ったりすることで、仕事や子どもに対する考え方を見つめ直す機会にしてほしい。保育の楽しさに気付けばやりがいを感じられるし、離職防止にもつながる」としている。

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