失われたものを通じて現在と未来を問う。劇団あはひ『ピテカントロプス・エレクトス』

劇団あはひによる『ピテカントロプス・エレクトス−あるいは私たちはどこから来たのか、私たちはどこへ行くのか?』5月24日(金)より東京芸術劇場シアターイーストで開幕する。

2022年、『流れる』『光環(コロナ)』の同時上演で話題を集め、同作の舞台美術で読売演劇大賞優秀スタッフ賞を獲得した劇団あはひ。『流れる』は能の『隅田川』を原案に、そこに『おくのほそ道』『鉄腕アトム』の要素をサンプリングして上演した意欲作。また『光環(コロナ)』はエドガー・アラン・ポーの短編小説『盗まれた手紙』をモチーフに上演した『Letters』をリクリエーションし、太陽の光環(コロナ)とコロナ禍とを重ね合わせ、2000年代に新たな概念として登場したいわゆる“セカイ系”に昇華したもの。

劇作家・演出家の大塚健太郎をはじめ、俳優3名、ドラマトゥルク、制作で構成される6名のメンバーが全員1998年生まれという若き団体。2018年に旗揚げして2019年には『流れる』でCoRich舞台芸術まつり!グランプリを獲得。早い段階で注目を浴びながら、独自の道を進み続けている。

そんな彼らが今回たどりついたのが「ピテカントロプス・エレクトス」。百数十万年前の地球上で生息していたといわれる、絶滅した種のかつての学名だ。1891年に発見された彼らは、発見当時は人類につながる祖先と言われていたが、現在は直接の祖先とは言えないとされている。また、この学名自体現在では使われていない。もうひとつ、「ピテカントロプス・エレクトス」はディスコ全盛であった1980年代の日本で、原宿に誕生した日本で初めてのクラブの名前でもある。桑原茂一と中西俊夫によって作られ、流行の最先端として注目を集めたこの場所は、わずか3年足らずで閉店した。

今作は彼らが「かつて存在し、いまは失われてしまったふたつのものを示す名を起点としながら、現在、そして未来を問う」喜劇四幕だという。

一時期注目を集め、そして消えたふたつの「ピテカントロプス・エレクトス」。この文字列は、直訳すると「直立する猿と人間の間」という意味をもつ。思えば、「間」は「あはひ」とも読める。ふたつのもののあいだに立つ彼らは、このふたつの事象をどのようにつなげて見せてくれるのだろう。

文:釣木文恵

<公演情報>
『ピテカントロプス・エレクトス−あるいは私たちはどこから来たのか、私たちはどこへ⾏くのか?』

作・演出:大塚健太郎

出演:
今村航、小川清花、上川拓郎、川添野愛、すずき咲人心、鈴木翔陽、外山史織、野口千優、長谷美里、美都 山上晃二、山田健太郎/松尾敢太郎/踊り子あり

2024年5月24日(金)〜6月2日(日)
会場:東京・東京芸術劇場シアターイースト

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2412817

公式サイト:
https://gekidanawai.com/works/pithecan

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