「1箱50円」からブランドに 栗原ねぎ社長・栗原光博さん 味と安全こだわり評判 長崎・雲仙  

外国人技能実習生らと一緒に収穫した雲仙栗原ねぎを手にする栗原さん=雲仙市瑞穂町

 冬場は糖度19度、シャインマスカットより甘いという。土壌を改良し、農薬はほとんど使わない。うまみと香りの強い白ネギ「雲仙栗原ねぎ」を、外国人技能実習生や障害のある人、家族の16人で栽培する。
 雲仙栗原ねぎは、長崎県雲仙市が認定する「雲仙ブランド」や県特別栽培農産物をはじめ、安全性などに配慮した農業管理基準「JGAP」、障害者が生産に携わる「ノウフクJAS」など数々の認証を受けている。台湾、香港、シンガポールにも輸出している。
 栽培のきっかけは2004年ごろ。58歳で急逝した父の育てたネギが畑に植えたまま残されていた。「託されたのかもしれない」。島原市の建設会社に勤めていたが、農家の6代目として継ぐことを決意した。
 4人の子どもたちを育てるため、昼夜問わず働いた。ところが最初の出荷で付いた値段は1箱20本で50円。サイズなどがふぞろいで買いたたかれた。悔しくてたまらなかった。
 その後、地元生産者のネギ部会に入り、栽培や選別の方法を教わった。諫早湾干拓事業の干拓農地を見学した際には衝撃を受けた。見たこともない農機具で素早く収穫する。外国人実習生もいる。しかも農家が卸値を販売店と直接交渉していた。
 「これからの農業は大きく変わる。納得のいくネギを作り、自分で売りたい」と思いを巡らせた。
 突き詰めた答えは「味」「安全性」。有機栽培されたブロッコリーのうまさを知り、農法を学んだ。自信のある商品ができた11年ごろから、パッケージに「栗原ねぎ」と印刷して出荷。「おいしい」とバイヤーや消費者の評判になり、販路を全国に広げた。
 昨年11月、埼玉県深谷市で開かれた白ネギ産地が集まるイベント「全国ねぎサミット」に初参加。雲仙栗原ねぎの甘さを生かした「ねぎの天ぷら」を紹介して大好評を博した。
 さらに手間をかけて甘く仕上げた冬季限定のブランド「葱匠(ねぎしょう)」を商標登録した。猛暑でも通年でネギを育てられるように、今年から標高900メートルの大分県九重町でも栽培を始める。
 今後の目標は働き方改革。受注生産に絞って計画を立て、労働時間を短縮したり、休日を取りやすくしたいと考えている。従業員が生き生きと働ける場を継続できれば、地域にも貢献できるはずだ。
 20年で耕作面積は6倍、売り上げは10倍以上になった。「つらかった時代は自分にとって薬だった」。空を見上げ、天国の父に感謝した。

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