大の里、Vへ「取り切るだけ」 九重審判長「レベルが違う」

 「あした、最後の一番を取り切るだけ」。大相撲夏場所14日目の25日、幕内優勝争いの首位に立った大の里は、支度部屋で今場所から結えるようになったちょんまげを直しながら、自らに言い聞かせるように語った。「優勝」の二文字を意識から外し、さらなる高みを目指す相撲を追求する。東十両3枚目の遠藤は同11枚目の志摩ノ海を寄り切って12勝を挙げ、十両優勝に望みをつないだ。

 当たってすぐに右を差した大の里。鋭い出足で前進し、湘南乃海をあっという間に押し出した。持ち味の馬力を生かした内容に土俵下で見守った九重審判長(元大関千代大海)を「レベルが違う。大の里にしかスポットが当たらない相撲」とうならせた。

 優勝争いは大の里と、4敗の琴桜、豊昇龍、阿炎、大栄翔の5人に絞られた。優勝決定戦となる可能性もあるが、九重審判長は「それが想像できないくらい大の里の調子が良すぎる」と手放しでほめ、大の里の初優勝を確信していた。

 昨年の夏場所でデビューして7場所目。師匠の二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)は「本場所の一番は稽古場の千倍、1万倍くらいの価値がある。いろいろな経験ができている」と成長を感じている。

 若武者が初夏の土俵の主役となるか。大の里は「来場所へつながる相撲を取る」と決意を込めた。

  ●ふるさと津幡沸く「勝って」

 大の里のふるさと津幡町は14日目での単独トップに沸き、優勝への期待が一気に高まった。千秋楽の26日は町役場町民プラザでパブリックビューイング(PV)が行われる予定で、町民は「必ず勝って」と郷土の星が賜杯を抱く姿を心待ちにした。

 「おー勝ったぞ」「すごい」。町文化会館シグナスでは大の里の等身大パネル横に設置されているテレビで町民らが取組を見守り、白星を挙げると、歓声と拍手が起きた。

 町内の60代男性は「なかなかないチャンス。優勝を目指してほしい」とエールを送り、魚津市からパネルを見に来たという会社員山城信弥さん(52)は「気負わずに明日も頑張って、ぜひ勝ってほしい」と話した。

  ●輝10勝、2年半ぶり2桁

  ●遠藤12勝、逆転Vへ望み 

 遠藤は流れるような攻めで2敗を守った。突き、押しからうまく二本入り、志摩ノ海を寄り切り。最後の詰めも万全だった。十両優勝の可能性には無関心だが、被災した地元に勝利を届けたい思いは強い。「そのために帰って準備する」と静かに闘志を燃やす。

 東十両5枚目の輝は2020年初場所以来、約2年半ぶりに白星を2桁に乗せた。突いて出ながら右を深く差し、同7枚目の獅司を寄り切った。十両で自己最多に並ぶ11勝目に向け「最後まで自分らしい相撲を取りたい」と語った。

  ●欧勝海3連勝

 東十両13枚目の欧勝海は会心の相撲で3連勝とした。右四つで左上手を引き、腰の重い大翔鵬を寄り切って5勝目。「思い切りいけた。最後の一番に勝つのと負けるのでは全然違う。頑張りたい」と気合十分だった。

© 株式会社北國新聞社