「ハリウッド屈指の珍作」なのに年間ランキング4位の“オランウータン映画”とは?今年94歳イーストウッドが出演を止められた『ダーティファイター』シリーズ

『ダーティファイター』©Warner Bros. Entertainment Inc.

最新作完成!クリント・イーストウッドが94歳に

ハリウッドのレジェンド俳優/監督、クリント・イーストウッドが5月31日に94歳の誕生日を迎える。イーストウッドは42作目となる監督最新作『Juror No. 2』の制作を2023年4月に発表し、ストライキによる撮影中断などもありながら、2024年4月にはポストプロダクションの完了もアナウンスされた。同作はニコラス・ホルトとトニ・コレットを中心に、キーファー・サザーランドや福山智可子らが出演する法廷スリラーだという。

まさに”生涯現役”のイーストウッドだが、今年3月に出席したトークイベントではかなり衰弱しているように見えると報じられ話題になった。とはいえ66歳で子どもをもうけたイーストウッドだし、映画ファンとしては髪や髭のせいで弱って見えると思いたいところだが、『Juror No. 2』が最後の監督作になることは間違いなさそうだ。

イーストウッドの主演代表作が一挙CS放送!

さて、そんなイーストウッドの主演代表作といえば、やはりドン・シーゲル監督と組んだ刑事アクション『ダーティハリー』(1971年)だろう。その後、自身でも監督を務めた人気シリーズ4作品に加え、大統領を狙う暗殺者と戦うベテラン・シークレット・サービスを演じたサスペンス・アクション『ザ・シークレット・サービス』(1993年)、さらに戦争アクション『荒鷲の要塞』(1968年)『戦略大作戦』(1970年)など往年の代表作が、CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:24時間 クリント・イーストウッド誕生祭」で一挙放送される。

そして同特集の放送ラインナップの中で今回とくに推したいのが、彼のハードボイルドなイメージを覆した『ダーティファイター』シリーズ2作。イーストウッド演じる剛腕トラック野郎ファイロ・ベドーが全米各地で巻き起こす、ケンカに恋に大忙しの痛快アクションコメディ・シリーズだ。

共演者はオランウータン!?名優イーストウッドの新機軸

当時すでに48歳だったイーストウッドが演じたファイロは“ストリートファイター”で、つまりケンカ上等のならず者である。まるでリアルファイトな近年のアクションと比べるとポカスカ感は否めないが、野良ボクシング感のあるケンカ・アクションは観ていて文句なく楽しい。しかし、同シリーズが「珍作」と称される所以は、準主役級のオランウータンの存在である。

イーストウッドはオランウータンとの共演について、エージェントなど周囲の人間からは出演しないよう助言されたという。当時はハードボイルドなキャラクターで人気絶頂だったから、動物ものコメディのせいでファンが離れたら困ると思われたのだろう。しかしイーストウッド自身はまったく後悔していないようで、むしろ同じような役ばかり演じることで飽きられてしまう危機感のほうが強かったようだ。

その判断が功を奏し、『ダーティファイター』は1978年の国内興行収入ランキング4位の大ヒットを記録。そして続編『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』も1980年の興収ランキング5位という大成功を収めてみせた。もちろんオランウータンのクライドの名演が大ヒットに貢献したことは言うまでもなく、のちに「6才児と共演しているようで楽しかった」とイーストウッドも振り返っているように、あたたかな笑いを届けてくれるシリーズである。

▼ケンカ野郎の恋バナ相手はオランウータン!『ダーティファイター』(1978年)

ファイロ・ベドーは大陸を股にかけるトラック野郎。そしてケンカをさせたら彼の右に出る者はいない腕っぷしを誇るケンカ屋。体重75kgの巨大なオランウータンのクライドを相棒に自由気ままな人生を送っていたが、そんなファイロが恋に落ちたから大変。惚れた相手は酒場の美人歌手リン。しかし彼女はスターを目指して旅立ってしまう。そしてリンを追うファイロは次々とトラブルに……。暴走族、復讐に燃えるロス市警、そして伝説のケンカ屋タンク・マードックがファイロの前に立ちはだかる!

アメリカ南西部を舞台に、クリント・イーストウッドが大暴れする本作で彼は、これまでになかった新しい魅力を発揮し代表作のひとつとなった。ソンドラ・ロック、ジェフリー・ルイス、ビバリー・ダンジェロ、ルース・ゴードン等、強力な共演陣も忘れがたい。

▼大ヒットを受けて制作された続編『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』(1980年)

“賭けケンカ”にあけくれる無敵の男ファイロ・ベドーに、ニューヨークの賭け屋ビークマンがひと儲けしようと目をつけた。拳闘チャンピオン、ジャック・ウィルソンとの大試合を1万ドルの前金でもちかけるが、ファイロはあっさりと断ってしまう。怒ったビークマンはファイロの恋する美人歌手リンを誘拐し、彼女の命とひきかえに試合をさせようと彼を誘い出す。そこへファイロとは因縁の暴走族ブラック・ウィドーの一団もなだれ込み、一般大衆も加わっての大乱闘へ!

「特集:24時間 クリント・イーストウッド誕生祭」はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年5月放送

© ディスカバリー・ジャパン株式会社