【霞む最終処分】(42)第7部 原発構内の廃棄物 処分議論停滞に警鐘 廃炉への展望描けず

焼却を前に積み重なる使用済みの保護衣など。低線量の放射性廃棄物は日々発生し続けている=2月28日

 東京電力福島第1原発は2011(平成23)年3月の水素爆発により大量の放射性物質が飛散し、敷地全体が汚染された。低線量の廃棄物も、さまざまな種類の放射性物質を含んでいる恐れがある。

 東電は放射性廃棄物の処分に向け、日本原子力研究開発機構(JAEA)などの研究機関の協力を得て廃棄物の性質の調査・分析を進めている。それぞれの廃棄物の汚染状況や処分した場合の周囲への影響などを見極めた上で、廃棄物の取り扱いや再利用策を構築する考えだ。

 今後は放射性廃棄物に加え、原子炉から取り出す溶融核燃料(デブリ)も対象とする総合分析施設の設置を検討しており、2020年代後半の完成を目指している。現在100人程度の作業員が先行して分析作業に携わっている。今後は毎年5人ほどのペースで増やし、訓練を重ねながら体制を強化していく。

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 「福島第1原発の廃炉に関するエンドステート(最終的状態)の議論は、廃棄物がどこへ行くのかという議論そのもの」。2022(令和4)年2月の原子力規制委員会の定例会見で、委員長の更田豊志(当時)は福島第1原発の廃炉完了を見据え、廃棄物の最終処分に関する議論を進める必要性に触れた。

 原子炉建屋の解体など今後控える廃炉作業では、既に発生済みの放射性廃棄物を上回る大量のコンクリート殻などが出ることは確実だ。原発構内の敷地には限りがあり、全量を保管できるだけの固体廃棄物貯蔵庫を確保するのは現実的ではない。

 最終処分の道筋が決まらない中、更田は2年前の会見で地上保管だけにこだわらず、一時的に構内に「埋設」する方法にも言及した。だが、長期保管に通じかねない印象を帯びる埋設という手だてが、地域の理解を得られるかどうかは見通せない。

 除染土壌を一時保管している中間貯蔵施設の整備先が大熊町、双葉町に決まる過程でも、難航の背景には「なし崩し的に最終処分につながるのでは」という住民側の不信感があった。

 更田は「地元には心理的な抵抗が生まれる」と自らの案の課題を認めながら、「東電や国がどこまで信用されているかということだ」と言い切った。

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 原子力規制庁も福島第1原発構内の敷地が逼迫(ひっぱく)する中、大規模な施設を設けて廃棄物を保管するのは難しいと認識している。通常の原発から出る廃棄物の処分先ですら決まらない現状で、福島第1原発で生じる膨大かつ多様な廃棄物の受け入れ先を選び、確保するのは至難の業だ。

 経済産業省資源エネルギー庁総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会委員を務める松久保肇(NPO法人原子力資料情報室事務局長)は「かなりの時間をかけて丁寧に議論しなければならない」と問題を解決する難しさに理解を示す。その上で、「原発事故からもう13年も経過している。廃炉完了まで30~40年とする全体の工程に影響しかねない」と指摘。「早期に結論を見いださなければ廃炉の最終形は見通せない」と停滞する現状を打ち破る必要性を強調した。(敬称略)

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