北九州で充電しニューヨークへ!音楽と一体化する<本物のミュージシャン> ジャズピアニスト・上野香織さん

西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。今回のゲストは、ジャズピアニスト・上野香織さんです。

世界レベルを目指し米国・ニューヨークへ

甲木:おはようございます。西日本新聞社 ナビゲーターの甲木正子です。

野口:同じく、西日本新聞社 野口喜久子です。

甲木:先週は、野口さんが大好きなジャズミュージシャンの方をお招きしてお話を伺いました。素敵な方ですね。

野口:本当に素敵ですね。

甲木:さっそくお呼びしたいと思います。今週は先週に引き続き北九州在住のジャズピアニスト・上野香織さんをお招きしてお話を伺います。上野さん、今週もよろしくお願いします。

野口:よろしくお願いします。

上野:よろしくお願いします。

甲木:先週は、もともとクラシックピアノをなさっていた上野さんが、高校卒業を機にジャズと出会って、それを仕事にしようと思ったことで、30代前半でのCDデビューやライブツアーなど順調にキャリアを積んでこられたお話を伺いました。上野さんはその後渡米されるんですけど、今週はニューヨークに行かれてからのお話を中心に伺いたいと思っています。ニューヨークに行こうと思った時は何歳の時だったんでしょうか?

上野:34歳のときです。最初のアルバムを出したのがその年でした。それから全国ツアーをして、CDを買って頂いた方に私を知ってもらいたくて、いろんな所で演奏させて頂きました。次にどうしようかと思ったときに、やはりニューヨークだろうと思ったんです。定期的にニューヨークに行っていましたが、「今だったら私、たぶん住めるな」と思ったんです。

甲木:住めるなと思ったということは、つまりニューヨークでピアニストとしてやっていけるなと思ったということですね?

上野:はい。26歳の時に行ったときは、一回北九州に戻って、ちゃんと勉強しないと私は通用しないと思ったんです。それから音楽に打ち込んで何年も過ごして来ました。その後ファーストアルバムを出したという感じでしたけども、やはりジャズはニューヨーク発祥なので、次はニューヨークに滞在して、世界レベルに揉まれたいと思い移住しました。

甲木:なるほど。しかしニューヨークというと、物価が高くて生活するにはすごく大変なんじゃないかと思いますが、今日どこで演奏しようかというような感じで、暮らしていけるんでしょうか?

上野:そうですね。ある程度教えたりしていましたし、行く先々で演奏してたら声をかけてくれるミュージシャンがいまして、「こういう仕事があるんだけど、明後日空いてる?」とEメールを頂いたりとか、日本と一緒で演奏してご縁が出来ていく感じです。最初は大変だったので、もちろん貯金はして行きました。

ジャズは基本即興 初めて見る譜面が弾けないと仕事にならない

甲木:やはり本場で声かけられるというのは、上野さんもハイレベルに合っていたことなんでしょうね。

上野:ニューヨークなので、ミュージシャンの数も多いんですけど、仕事も多くいろんな仕事があります。レストランで演奏したり、パーティーや教会での演奏だったりとか、ライブももちろんあります。

甲木:毎日、真剣勝負ですよね。

上野:そうですね。そしてもっと機会が欲しいし、チャンスが欲しいので。自分のために好きでやってるので、その辺は本当に苦はないですね。

甲木:なるほど。楽しんで苦はないとおっしゃっても、やはり今日の演奏がうまくいかなかったら、次の声がかからないんじゃないかとか、このレベルの人とのセッションはできないかもしれない、という緊張感などはあったんでしょうか?

上野:緊張はしてなかったですね。すごいミュージシャンがいても緊張はしなかったです。

野口:失敗したことなどありますか?

上野:この曲は知らないというのはありました。セッションの時でも携帯ですぐ調べて譜面を出して最低限の情報が載っているスコアがあり、それを出して弾いていました。

甲木:では、即興ですよね。

上野:即興です。ジャズは基本、即興なんです。

甲木:しかし知らない曲の即興はすごいですね。

上野:初めて見る譜面が弾けないと仕事にならないんです。それはずっと日本でもやってきていました。

野口:すごい世界ですね。

尊敬する人はオルガン奏者 音楽と一体化する本物のミュージシャン

甲木:尊敬するミュージシャンはいらっしゃいますか?

上野:そうですね。先ほどの井島さんもそうですが、一番大きな影響を与えてくれたのは、オルガン奏者の“ドクターロニースミス”という方がいらっしゃって、その方も数年前に亡くなられましたが、その人との出会いがかなり大きいですね。その方のお部屋が隣で、いつもオルガンの音が聞こえてくるわけです。彼が言ってたことが、オルガンと一体になりたいということでした。すでにすごい人ですが、もっと近づきたいと言っていました。

彼はテレビを見ながらでもオルガンを弾き、朝起きたらオルガンを触って……という人でした。一緒にご飯を食べると普通のおじいちゃんなんですけど、いざオルガンの前に座ると神がかったような演奏をするんです。自然に音楽が溶け込んでいるような感じで、彼の中に苦というものが無いんですよね。苦労されたかもしれないんですけど、音楽と一体になっているという感じで、私もこういう本物のミュージシャンになりたいと思いました。

甲木:では、もしロニースミスさんと会ってなかったら、ここまでの高みにいってなかったかもしてないということでしょうか?

上野:分かりませんが、ものすごく影響を受けました。ジャズの真髄というか、すごく楽しいということが伝わったんですよ。本当に言葉で言いようがないですね。違う世界が見える感じでした。一緒に演奏した者しか分からない感覚です。皆さんにお伝えしたいんですけど、ステージを見て頂くしかないと思います。

「ジャンルを超えて演奏すること」に挑戦したい

甲木:これから挑戦したいことはありますか?

上野:そうですね。この放送の前に終わってしまいますが、3月のツアーで小倉で2日間、初めて弦楽四重奏と私のピアノトリオとコラボで演奏します。もう一つは来年ぐらいにできたらいいなと思っていますが、オーケストラと共演したいということがあって、私はジャズピアニストとして活動してますが、ジャズを通してジャンルに関係なく私の音楽を聴いて頂きたいということで、その一つがオーケストラです。そしてそれだけにとどまらず、いろんな活動をして行きたいと思ってます。

甲木:なるほど。ありがとうございます。先週、今週の2回に渡り、北九州在住のジャズピアニスト、上野香織さんにお話を伺いました。上野さん、ありがとうございました。

野口:ありがとうございました。

上野:ありがとうございました。

〇ゲスト:上野香織さん(ジャズピアニスト)
〇出演:甲木正子、野口喜久子(西日本新聞社北九州本社)

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