【寄稿】「高齢化と人口減少」 変化への備えと知恵を 谷村隆三 

 自動車運転の高齢者講習を受けてきた。これで2回目、毎日車に乗っているので楽観的だった。これまで通りの視力と視野の測定、コースの実走行に加え、今回は認知機能講習があった。
 当日。まず時計とスマホを見ないで検査用紙に今日の年月日、曜日とだいたいの時間を書く。次にスクリーンに4つのイラストが表示され、一つ一つ名前を答える。例えばてんとう虫、フライパン、ライオンなどと。それが4画面続く。終わると「それを覚えておいてください」と言われるが、まあこれくらい記憶できたとのんきにしていた。
 次に配られたのは、数字が無作為にずらりと並んだ紙だ。できるだけ早く3と7に×をつけてください、次は1と5を消すように-と。
 思えばこの作業が曲者だった。「では、先ほどのイラストにあったものを思い出す限り全部書いてください」-。どうしても全部は思い出せない。認知症予備軍なのかとがっかり。とはいえ、若い頃にやったとしても多分これくらいだったのかも…。
 75歳になると、認知機能検査を含めたこれらの講習終了証明書がないと運転免許が更新できない。免許の返納も考えたが、わが家は高台にあるので通勤や買い物にたちまち困る。今は自動車を手放せない。病院や商店が遠く、斜面地に住む人や農家の人は高齢化が進むこれから先、どうすればいいのだろうか。
 先日新聞に載っていた鈴木史朗長崎市長、平家達史氏へのインタビューには、急速に進む長崎の人口減少対策のアクションプランがあった。「経済再生」「少子化対策」などを基軸に据えた将来展望には大いに期待する一方、課題の多さに気が遠くなるのも本音。これらはいわば前向きの政策だがこれまでも語られてきたことで容易ではない。
 国家レベルの人口動態のパターンは(1)乳児死亡率の低下(2)人口増(3)都市化(4)出生率の低下(5)人口減少(6)移民流入-と必ず進むとされる。わが国はまだ移民は少ないが、何らかの形で受け入れを拡大することは避け難い未来のようにも思える。地方も同様になると考え、備えた方がいい。
 仲間内では、むやみに県の経済が発展したり、観光客が押し寄せると居心地が悪くなるという声も強い。住民感覚や職業、世代によってかなり違う。新しい集客施設ができても活気が長続きしない。政治と経済は難しい。
 身の回りを見ると気が重いことが多い。学校の生徒は減り、高齢の一人暮らしが増え、荒れはてた空き家が目立つ。まずはその辺の具体策から知恵を絞りたいものだ。

 【略歴】たにむら・りゅうぞう 1949年長崎市出身。星野組取締役相談役。2005年から県建設業協会長を17年間務め、現在は同会相談役。建設業労働災害防止協会県支部長なども務める。武蔵野美術大学造形学部卒。

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