石垣のNFTを返礼品に 長崎・大村市のふるさと納税 仮想空間で所有、世界初の取り組み

寄付するとアクセスできるページのイメージ(特設サイトより)

 長崎県大村市のシンボル、玖島城跡の石垣が仮想空間の中で自分のものになる-。市は本年度、複製不能なデジタル資産「非代替性トークン(NFT)」を活用し、デジタル空間内にある城の石垣の石一つ一つの所有権を市のふるさと納税の返礼品に加えた。NFTで城の石垣を取り扱うのは世界初の試み。寄付は城の保全に役立てるという。
 NFTとは、画像データなどを改ざん不可能な仕組みで販売するデジタル資産の総称。近年は風景写真やアート作品のNFTをふるさと納税の返礼品とする自治体もある。市によると、大村ならではの返礼品開発を検討する中で、玖島城とNFTを組み合わせるアイデアが生まれた。
 「玖島城NFT」は実物の石垣を画像データ化し、約580個の石一つ一つに番号を割り振っている。3万円を寄付すると、デジタル空間内で石1個の所有権を得られる。実物の石の所有権は移らない。
 他の返礼品と同様、ふるさと納税ポータルサイトから「玖島城NFT」を選べる。寄付するとカードが届き、カードをスマートフォンなどで読み込むと画面上にデジタル空間内の玖島城が登場。自分が取得した石の位置を確認できる。石の画像には自分の名前やメッセージなどを書き込むことも可能。デジタル空間内で他の人に所有権を奪われることはないという。

石垣の石に名前などを記入した画像イメージ(特設サイトより)

 得られた寄付は実際の石垣の保全に向けた調査研究費などに使われる。市観光振興課は「全国のお城好きやNFTマニアの方々にアプローチし、玖島城の維持のために寄付したいという方にも知ってもらえれば」としている。

◎美しい石垣 市のシンボル
 玖島城は1599年に築かれ、明治維新まで大村藩主の居城だった。現在は桜やハナショウブの名所、大村公園(大村市玖島1丁目)として知られ、美しい曲線の石垣は市の観光ポスターなどにも取り上げられる大村のシンボルとして市民に親しまれている。
 初代藩主・大村喜前が、海に囲まれ守りに適した玖島に築城。1614年に2代純頼が城を大改修した際には熊本城を築いた武将、加藤清正の助言を受けたとされる。

崩壊の恐れが判明し立ち入りが規制されている穴門=大村市、玖島城跡

 市歴史資料館によると、玖島城の面白さは「城内で石垣を積む技術の向上が見られる」点にもある。北側の「いろは段」周辺は戦国末期の築城当時のものが残り、搦手門から南側は改修を経た江戸期の石積みを見ることができるという。
 城の南側には石を積んだ穴門があるが、経年劣化で崩落の恐れがあると分かり、現在は周辺の立ち入りが規制されている。市によると「玖島城NFT」で得た寄付金は穴門の保存方法を検討する調査研究費などに充てるという。

© 株式会社長崎新聞社