「ゼロゼロ融資」6割が予定通り返済中 物価高、人手不足…厳しい状況は変わらず

改装の打ち合わせをする島田秀樹社長(右から2人目)ら=13日、鹿児島市上本町

 新型コロナウイルス対応のための政府の資金繰り支援策で、実質無利子・無担保融資「ゼロゼロ融資」の返済が、鹿児島県内で利用した企業の9割弱で始まっている。うち6割が予定通りに進む。物価高や人手不足が重なり厳しい状況が続く中、金融機関や各種団体は連携して事業者の経営支援に尽力する。

 県信用保証協会(鹿児島市)によると、2024年3月末時点で、同協会を利用したゼロゼロ融資は1万5000件。うち87%の1万3000件で返済が始まった。

 6割(7800件)で計画通り返済が進み、3割(4100件)は自己資金や借り換えで完済済み。残り1割弱(1100件)は、同協会が肩代わりする代位弁済325件(25億4900万円)や返済猶予期間の延長、月々の返済金額の調整などだった。

 企画情報課の矢元公平課長(46)は「コロナは落ち着いたが原材料の高騰や人手不足が重なり、計画が滞る事業者もいる。今後も中小企業者の声を聞きながら丁寧に対応したい」と話す。

◆ ◆ ◆

 南日本銀行(同市)は、資金繰りに不安を抱える企業に対し23年1月から伴走支援を提案する。23年度後半は平均30件ほどの利用が4月は50件。融資部の肥後倫幸上席調査役(49)は「円安進行による原材料の高止まりなど不安要素があり増加した」と推測する。

 ゼロゼロ融資を予防的に利用した例もあり、全ての企業が厳しい状況ではないという。肥後上席調査役は「設備投資など前向きな資金需要も出始めている。事業者の課題を確認しながら、本支店一体となって支援を続ける」と力を込める。

 県信用保証協会や県内金融機関は昨年4月、ゼロゼロ融資償還を見据え、「経営改善支援連絡会議」を設立、今年3月末までに22社を支援した。経営診断や人材育成、販路拡大と内容は多岐にわたる。

 交流サイト(SNS)を使った宣伝方法やパッケージデザインの刷新などは、国が設置する「鹿児島県よろず支援拠点」(同市)の力を借りる。幅広い分野のコーディネーター30人が所属し無料で相談に応じる。

◆ ◆ ◆

 5月13日、改装中の「肉の名門 島田屋」旧本店(同市)に県信用保証協会、銀行、よろず支援拠点の担当者らが集まった。店舗改善を専門とするよろず支援拠点のコーディネーターは、客の導線確保や陳列棚の配置といった売り上げ増加につながる店舗作りについて助言した。

 同社はホテルや結婚式場などへの卸業が9割を占める。コロナの5類移行もあり、業績は9割まで回復したものの宴会や婚礼は小規模が定着した。

 新たな収益策として、旧本店を改装し総菜や加工品の販売を強化する。6月中の開店を目指し、県内企業との共同商品開発にも取り組むという。島田秀樹社長(56)は「食肉卸として培った技術を生かし、島田屋の商品として販売する。知名度を上げて増収につなげたい」と意気込んだ。

© 株式会社南日本新聞社